RECORD

Eno.175 水元イチノの記録

呪いの正体

 けらけらと笑いながらマグカップで焼酎を飲む君は、いつもカバンに4種類のタバコを揃えていたよね。味なんてわからないから手についたやつを吸うんだって言ってた。わかば、セッタ、ピース……あとはなんだっけ。メンソールは目が覚めるから好きじゃないっていうのは覚えているのに。

 8年経った今でも忘れないことはある、その裏にはもちろんそうでないこともたくさんあって、それに気づくたびにあの日々を取り戻したくなる。

 波打ち際でまた会えるかな、なんて聞いてきたのを思い出して、この前会いに行こうかとも考えた。どのツラ下げてって感じ。
 でもね、会えなかった。あれから8年。きっと君は、私の知らない人と、私の知らない言葉で話している。
 それを見たくなくて。どうしても許せなくって。

 だからたぶん、今日のは罰だったんだと思う。変わろうとした私への罰。見知らぬ交流を広げようとお茶会について行ったけど、ホストは現れず先輩の入れたお茶だけ飲んでそのまま帰った。
 私の祈りを、私が曲げるのは許されないんだろう。この身を蝕む呪いの正体は、郷愁だ。