RECORD

Eno.395 星多 萠の記録

種はまだ飛ばない

タンポポの花が綿毛に変わる頃。
北摩川――夜の河川敷で、わたしはその子を待っていた。


「クゥーン」



「やっほ。わたげ」



わたげ。
わたしが一人の時、ふらりと現れては去っていく犬。
犬種はビションフリーゼ……だと思う。
野良犬なのか飼い犬なのかは分からないけど、
この名前と首のリボンはわたしが勝手に付けた。


「ね。不思議なことが起き始めてるんだ。
もう普通には生きていけないのかな?って思うくらい」



「……(ペロペロ)」



「あはは、くすぐった。
……ありがとね。ちょっと元気出たよ」



「ワフ!」



頭をもふもふすると、一声鳴いて闇へと消えていく。
わたげの起こした風に、タンポポの綿毛が静かに揺れた。