RECORD
ヨンの噂話

「ねぇ、知ってる?無限図書館の噂話。
沢山本があるけれど、景色が同じだから迷子になっちゃう図書館。
無限に本棚が増えているんだって。
帰りたかったら絵本を読み聞かせてあげると帰らせてくれるんだって」

「ただの絵本じゃダメ。ちゃんとせがまれたものじゃないと。
お話を終わらせないと。途中だと気になっちゃうでしょ?
始まったら終わらせないと物語に失礼だ」

「本が読むことが好きな子がいたんだ。
毎日毎日本を借りては読んでを繰り返し、繰り返ししていた。
ある日、少し用事が長引いて行くのが遅くなったんだよ。
でも返さないといけない本があったから、図書館に行くしかなくて」

「ドアは開いてた。
まだ人がいる、そう安心して中に入った」
何かが違う。違和感。

「本棚に本を返そうと探すけど、見つからない。
本棚にある本は全部読めない。
進んでも進んでも、本棚しかない。
本棚の迷宮、そこに迷い込んだことを理解するのは早かった」

「方向感は狂いやすい。
樹海もそうだろう?同じ景色ばかり見ていると分からなくなる。
何時間歩いたのかも分からない。
倒れるように座り込んだ。
ふと視界に入ったのは絵本」

「なぜか、その絵本だけタイトルが読めた。
『おしまいのないえほん』」

「手に取って、読み始めました」
『むかしむかし、ひとりの子どもが ほんのなかで まよいました……』
『つづき、よんで』

「どこからか声がした。
ひとりじゃない。大勢の、子どもの声。
怖い、怖いのにやめたら帰れなくなる。
読む手が止まらない。声の震えを抑えるように、続きを読む」
『……こうして 子どもは ぶじに よみおえることが できました』

「最後のページを読み終えたその時、空気が変わった。
いや。
帰ってこれた。そう確信した」

「……この子は終わりのある絵本だったからよかったけど、終わりがなかったら?」

「続きが気になって、気になって書くんだよ。
でも、書けなかったら?」

「無限図書館にいる子どもたちの仲間入り……かもね?」
今日も烏が鳴いている。
烏が鳴いたらー……。