RECORD
Eno.472 志瀬津 拳悟の記録
幼い日の記憶
遠い日の記憶。
自分が体験した記憶ではあるのだろう。
けれど、夢で見た記憶だ。或いは祖父に聞いた話を自己のそれと認識したか。
ともあれ、年子である妹がおなかにいるときの母との記憶。
一歳の時分だ。言葉は少しわかればいい程度。立っていたかすら定かではない。
その頃に、愛おしそうに腹部を撫でる母から言われたのを覚えている。
「妹を…鈴鹿をお願いね、お兄ちゃん。」
日本語であったか、母の母国語であったかかは定かではない。
けれど、それが最後の俺への母の願いだった。
だから、なのだろうか。物心ついたころには母に似ていると言われた妹を大事に想っている。
家族だから、兄妹だから。その枠を超えている自覚はある。
それでも、写真でしかもう顔を見ることのできない母の願いを裏切りたくないと、夢を見るたびに思っていた。
だのに。
あの日、妹を救えなかった。
自分が体験した記憶ではあるのだろう。
けれど、夢で見た記憶だ。或いは祖父に聞いた話を自己のそれと認識したか。
ともあれ、年子である妹がおなかにいるときの母との記憶。
一歳の時分だ。言葉は少しわかればいい程度。立っていたかすら定かではない。
その頃に、愛おしそうに腹部を撫でる母から言われたのを覚えている。
「妹を…鈴鹿をお願いね、お兄ちゃん。」
日本語であったか、母の母国語であったかかは定かではない。
けれど、それが最後の俺への母の願いだった。
だから、なのだろうか。物心ついたころには母に似ていると言われた妹を大事に想っている。
家族だから、兄妹だから。その枠を超えている自覚はある。
それでも、写真でしかもう顔を見ることのできない母の願いを裏切りたくないと、夢を見るたびに思っていた。
だのに。
あの日、妹を救えなかった。