RECORD

Eno.598 鍵原 祝詞の記録

《黙殺》と《謀殺》

 其れは心的外傷トラウマに巣食う悪魔だと人は云う。則ち此れが発現したからと云って俺の異術が目覚めた訳では無いらしい。
 率直に云って其の時は落胆した、漸く兄達のような退魔師になれるのだと思ったのに。怪奇を狩る者になれるのだと思ったのに、其れ処か腹の内から怪奇を産もうとは。

 其れは《マステマ》と名乗った。今此処で生じたばかりの怪奇が堕天使の名を名乗ろうとは生意気だとは思ったが、《黙殺の怪異》では些か無粋で物騒か、何て暢気に思い至っては其れの望むように呼ぶ事にした。
 然し、最初は落胆こそしたが、其れは使えた。其れは一人で裏世界に趣き一人で怪奇を狩る力を、俺に与えた。謂れ無き理不尽に抗う力を、俺に与えた。

 素晴らしい!!
 俺を勝てる相手と侮って突っ掛かって来た莫迦共を返り討ちにしてやるのは実に痛快だ!!
 翼と拳は始めから俺の内に有ったのだ!!

 嫌われ者の烙印レッテルが実を伴った頃、問い掛ける声が有った。
 何処で聞いた声であったか、其れは云った。暴力に長けたばかりに正義を謳い、反論を黙殺する彼奴等を、果たして返り討ちにするのみで良いのか、と。
 「怪異使い」の才と神秘武装化メタフィジカとは、相性が良過ぎたらしい。

 其れは《オリヴィエル》と名乗った。兄達は《謀殺の怪異》だ、連れて居ればいづれ飲まれてしまう、狩ってしまおうと云った。

 断った。

 俺の身の内から生じたのだ、必ずや調伏して見せる、何て宥め透かして其の場では見逃して貰う事が出来た。未だ異術も満足に扱えず、此れ等無くしては怪奇や退魔師相手に自衛も出来ぬ俺を慮っての決断だったのだろう。兄達には悪い事をしてしまった。
 何故って、《謀殺》何て無粋で物騒じゃ無いか、此れは《必要悪》だ。正義を騙る彼奴等をふるいに掛ける為の力だ。何て云えば心配させてしまうだろう。況して末の弟が《謀殺》何て物騒な力を得たと云うだけでも、優しい兄達は心を痛めていた筈だ。何もかもに対して反抗していた俺でも、兄達に心苦しい思いを強いる事は本意で無い。



 其の時から、俺の緩やかなる神秘氾濫エンダー化が始まった。



「んー……
 今回はこんなもんかな、まだまだ全然だけど。
 あんま根詰めてもしゃーないし。」


「コレ? 勿論今回も作り話。
 面白かった? ……って言っても序盤だし、ちょっと説明臭いかなーとは思ってんだけどさー。」


「一人に二つ能力が発現、やっぱちょっと設定盛り過ぎ?
 ……いいんだよ、どうせ敵キャラだし。寧ろコイツは二つも能力手に入れちゃった所為で徐々にヤバ怪奇になってくって状況なんよ。
 今どう死なせよっかなーって考えてるトコだから。」