「………くぐったね、じゃあ戻そう。」
鈴の音。
「……久々だなあ、あの道が賑やかになるのは
うん、そうだ、きっとそうに違いない」
RECORD
裏世界 1
黒い影が何個か、何かを語り合っている。
……ように見える。
「繧ェ繧ソ繧ッ殿、見ましたかな、今日の■■■■、大変素晴らしいものでしたぞ!」
のように、今はもう表立ってされない話が、ずっとずっと聞こえてくる。
「……ンン、今どき■■■■■が王道でないと?あれだけ最新作が出ているというのに?」
表世界では考えられないような、しゃしゃり出ている声も聞こえる。
その横には、二次元、空想上にしか存在しないような格好のものが、当たり前のように歩き、時々争っている様子が見える。
また、小さなぬいぐるみも意志を持ち、ぬい!と声を上げている。
空想上の存在が、アニメショップを眺めては、このアニメ楽しいよね、と外の世界の人達と同じように話す。
そう、ここは裏世界。表世界のサブカルチャーが神秘と混ざって怪奇となって、自然と集まった道。
*そこから、幾らかの時間
息を切らすように走る。
最初は店の道が分からない、それだけだと思っていた。
だが、おかしい。
……確実に周囲の光景がありえない事になっている。
喋ってはいけないものが意志を持っている。
横を見れば化けた文字の看板と黒い影。
そして、背中を伝うような不安と夕暮れ。
……何もかもが、おかしいんだ。
走っても元の場所、表世界に戻れない。
「………っくそ!何処だよここ!……俺はただグッズでも見るかって思っただけなのに…
しかも、電波も通じねぇし…訳わかんねぇことしか聞こえねえし…何なんだよ」
あの時と同じ感覚。最初に裏世界に……
裏世界?
「………もしかしてここって、裏世界…なのか?」
……ならば、神秘管理局まで行けば、知っている場所まで行けば。
だが
「どこと何処が繋がってんだ…?」
道は分からない。
───りぃぃぃぃん、ちりん。鈴の音。
此方だよ。此方だよ。そんなささやき。
鈴の音が聞こえた気がする。これは助けか?それともおびき寄せる罠なのか?
……だが、ここで逃げるよりは、離れるよりは。
「……鈴の方へ、歩いてみるっきゃないっすか」
ともかく、走る。
歪なメインストリートからは外れて、黄昏時の薄暗い道。
読めない看板の中に、一つだけ認識出来るものが。
「みち、しるべ…?」
未知標、見つけた看板は確かにボロボロだが読めるもので。
店の扉は確かに、空いていた。
……足が震えている気がする、けど鈴の音も近い気がする。
……1歩、1歩と店内へと行ったか。
店内に入る。……様々なアニメグッズが所狭しと並んでいるように、見える。
けど、何だろう。自分の事を見つめてきている気がする。
さっきの大通りよりはマシだけれども。
「………やっぱ、居心地が悪いよな」
いつもの中古ショップは平気なのに。
「…ここに来たはいいけど…物が置いてる以外は……なんも無いのか…?
……やっぱ店出てあっちの方を探すか…?」
挙動不審に店内を歩く。
「……あれ、こんな広かったっけ?」
さっきより空間が広い。外見と空間が合わない気がする。
「……出口、って何処なんだ…?」
「店の出口かい?
それとも………この世界からの出口かい?」
鈴がチリンと。どちらとも取れない声がした。
「…!?」
声の正体は分からない、けど、
全ての方向から見ているのはこの声の主なのでは、
と思うくらいに、見透かされている感覚がした。
「……っ、この、この不気味な世界からの出口があるんすか!」
震える、裏返る。怯えている声で。
見慣れているけど、見慣れない光景に囲まれて、叫ぶ。
「なるほど、そっちだね。
分かった………それじゃあ」
りぃぃぃん、鈴のような音。
「……本当はもっと違う場所なんだけど、君は迷いそうだ。
すぐ近くに、出口を寄せた。さ、そこを通って帰りなさい」
近くを見れば、暖簾のかかった不思議な棚の列がある、近づけば、他の場所より、何処か安心感のあるような、吸い込まれるような、そんな感覚がするだろう。
「……うおっ、…っ、本当に出口っすかね
……すんません、お手数お掛けしたっす…ありがとう、ございます」
本当に出口かは分からない、が、
噛み付くよりは従う。多分これが懸命な判断だ。
一礼をして、暖簾を潜った
閑話休題
暖簾をくぐった。………瞬間。
身体の近くにまとわりつくような不気味さは無くなった。
……軽くなった体で、店内を見る。
見覚えのある光景だ。
「………っぱここって、みちしるべ…」
中古グッズ屋だ、しかも頻繁に来る。
……グッズが目線を向けてくることは無い。
…グッズを探す人、目的もなく歩く人……自分以外の人も居る。
戻ってきた、確証して、見慣れた店内の、出口へと歩いたか。
出る時に『ありがとうございましたー!』と元気な声も聞こえたな。
ちょっと疲れたような顔で中古屋から出てきた。
相変わらずの賑やかさだな…と思いながら帰って行った










