RECORD

Eno.232 月影誠の記録

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ちょっと学校で言いづらいことに触れられた。
「生物知識が豊富で凄い」、と。

俺はこれを、決して褒められた理由で得たわけではない。
確かに生物が好きだから、ではある。
日常に居る生き物がなんなのかの好奇心から、でもある。
けれど、本質はそうじゃない。
命の線引きをするための知識。
自然に触れるから、危険な自然を避けるため。
貴重な自然には触れず、むやみに踏まず詰むような真似もしないため。
確かに、それも理由だ。

けれど、けれど本当は。
もっと、奥底にある、神秘本能が疼いて。



京と葛山には言える話だ。
京は怪奇だから話せる。人間ではない。
価値観が人間のそれではないから明かすことができる。
裏側の俺を知っている。だったら、もうすでに明かしているようなものだ。

葛山には『優しい自分で在りたい』理由を話している。
言えない理由は、在りたい自分との齟齬が生じるから。
そして葛山だったら大して動じないだろうし、何も変わらないと思った。
だから、話した。

話せた。

何かが変わってほしいわけではない。
別に変えようとも思わない。
同情が欲しいわけでも、気遣ってほしいわけでもない。
慰めも要らない。そっとしておいてくれたら大丈夫。

それでも軽蔑はされたくない。在りたい自分を壊したくない。
だから話せない。これを明かして、引かれたくない。

何より、罪悪感が苦しくて、喉につっかえて、出てこない。
俺は。俺の狂暴性をよく理解している。


……葛山に話して、よかったと思う。
何も変わらなかった。お互いの関係も、立場も。
ただお互いに、お互いの『加虐欲』を明かして、知った。
だからスタンスも似ているんだと理解した。

一人じゃないんだって、分かったから。
ちょっとだけ、生きやすくなったよ。
お互いに変な噛み合い方をして、思わず笑ってしまった。



なお夜は一転してアレックスさんと一緒にザリガニ釣りをした。
アレックスさんはあまり器用ではないらしく、一挙一動が可愛い人だった。
明るくて話しかけやすい、気さくないい人だ。
食の感謝の話も少しした。
感心されたけど、自信の異常性をよく理解しているから。
その分命を頂いている、という自覚があるからあの言葉になったんだろうな。
いい人で在りたいから、この辺りは話さないのだけれども。


泥抜きしないとやっぱり食べづらいらしい。
そんなに? もしかして洗い用が足りなかったりする?

……でも確かに水には晒さないもんなぁ。それでか?

あと英語を教えていい、と言ってもらえた。
でも絶対に恒常化するのは俺が耐えられない。嫌いすぎて。
なのでテスト前だけ英語を教えてください、とお願いした。
俺の醜態が晒される日を乞うご期待ください。

めちゃくちゃ楽しかったし、息抜きになった。
やっぱり誰かと釣りに来れるといいなあ。
人が居ると、人との縁に感情が引っ張られて、必要以上に考えなくてすむ。


―― I hate you because you are big wuss.


「……覚えとかんでええ英文ばっかり、残っとる」