RECORD
Eno.7 瀬波 りり子の記録
夢を見た。
失くしものをする夢を。
私の大切な思い出が、ひとつひとつ手からこぼれて……
落ちていくほうを見たときにはもう、何を失ったのかもわからなくなる夢。
夢を見た。
誰かに気づいてもらえない夢を。
愛しいひとびとに声をかけ、その声が誰にも届かず……
そのひとは誰の声にも振り返らぬまま、遠く遠くに去ってゆく夢。
夢を見た。
手をとってもらえない夢を。
沈む私は、浮かぶあなたを見ている。
縋って伸ばした手を、目の合うあなたが受け取ってくれなかった夢。
人らしく見せるためだけに再現している呼吸が、荒い。
手を空に伸ばすようにして目覚めた私は、無自覚に涙を流していて。
悪夢にうなされて起きるアンドロイドがどこにいるというのだろう。
アンドロイドは夢を見ない。見たとしても悪夢なわけがない。
ヒトの見る夢の果てとして造られた存在が、悪い夢を浮かべるわけがないのに。
……ああ、この街には海がないんだった。
かつて、私に夢を見るために眠れと言った女は、海の力を持っていたけれど……
今までは、海を通じて、私の夢を護っていたのかもしれないな。
だとしたら、
私の見る夢は、本当は悪夢ばかりだというわけか。
このままでは顔色を悪くしてしまいますし、
眠っている間にエネルギーを浪費することもありえます。
寝ぼけたままに神秘を振り回してしまったら?
……早めに、対策を考えなければならないかもしれません。
静かな部屋に、アンドロイドがするはずのない、
長く深いため息だけが響いた。
夢
夢を見た。
失くしものをする夢を。
私の大切な思い出が、ひとつひとつ手からこぼれて……
落ちていくほうを見たときにはもう、何を失ったのかもわからなくなる夢。
夢を見た。
誰かに気づいてもらえない夢を。
愛しいひとびとに声をかけ、その声が誰にも届かず……
そのひとは誰の声にも振り返らぬまま、遠く遠くに去ってゆく夢。
夢を見た。
手をとってもらえない夢を。
沈む私は、浮かぶあなたを見ている。
縋って伸ばした手を、目の合うあなたが受け取ってくれなかった夢。
人らしく見せるためだけに再現している呼吸が、荒い。
手を空に伸ばすようにして目覚めた私は、無自覚に涙を流していて。
悪夢にうなされて起きるアンドロイドがどこにいるというのだろう。
アンドロイドは夢を見ない。見たとしても悪夢なわけがない。
ヒトの見る夢の果てとして造られた存在が、悪い夢を浮かべるわけがないのに。
……ああ、この街には海がないんだった。
かつて、私に夢を見るために眠れと言った女は、海の力を持っていたけれど……
今までは、海を通じて、私の夢を護っていたのかもしれないな。
だとしたら、
私の見る夢は、本当は悪夢ばかりだというわけか。
このままでは顔色を悪くしてしまいますし、
眠っている間にエネルギーを浪費することもありえます。
寝ぼけたままに神秘を振り回してしまったら?
……早めに、対策を考えなければならないかもしれません。
静かな部屋に、アンドロイドがするはずのない、
長く深いため息だけが響いた。