RECORD

Eno.675 加賀宮 天音の記録

神秘に触れる

「――『アザーサイド裏世界』かぁ。」



心が揺れる。
ニセモノの住宅街と、赤い赤い夕焼けが、瞼の裏にこびりついている。

「……。」



小さな時の頃を思い出す。

避けては通れない道だってことは、とうの昔に判っていた。

それでも、できることなら避けたかったけど。
触れられないならそれに越したことはなかったのだけれども。
あるいは、この街にやってきた時点で、
もう定められていた運命だったかもしれないのだけれど。

コンパクトミラーを取り出して、自分の顔を見る。



『見える人にしか見えない扉』

そのむこう側のこと。
そのこちら側のこと。

『神秘とは、語られぬがゆえに神秘である』

分かっている。
分かっている。
うちがうちで居られるように、そして

――大切なものを、喪わないように。