RECORD

Eno.53 浅川 葵の記録

浅  川  葵

葵が進学を控えた3月、今までただの毛玉であったものに突如として変化が訪れた。

見た目がアルパカのそれになったのだ。

あまりにも唐突で突拍子もなく意味不明な変化は、その毛玉がより神秘由来のものであることを強調した。
母は毛玉に対しての警戒を一層強めることになったが、当の毛玉は今までどおりほとんどの時間を葵の鞄の中で過ごした。
時折顔を覗かせては「プェ~ン」と一鳴きする程度であり、鞄から出て歩き回ることも稀であった。

ただでさえ神秘を引き寄せやすい葵に桃色のアルパカまで備えられ気が気でない母は、神秘管理局の知り合いを数人呼びつけて毛玉の調査に乗り出した。

摂食や睡眠といったおおよそ生物らしい行動は一切とらないこと。
毛の中は物理法則がおかしく、様々なものを出し入れできること。
外部に対する警戒心がなくおとなしい性格(のように見える)こと。
毛玉時代と同じく物理的手段では葵と引き離せないこと。
『お祓い』等の対処法もまるで効かないこと。

以上のことから、母は不服ながらも毛玉の経過観察を続行することになる。

かくして葵の鞄にはいつでも桃色のアルパカが潜むことになる。