RECORD

Eno.251 鳴宮優希の記録

【7.僕の出来ること】

 
 奏翔のご両親と妹さんに挨拶をした。
 ご両親は優しく温かい人に見えた。
 妹さんは、明るく元気な人に見えた。

 僕の新しい 家族たち。

 みんな、僕のことを歓迎してくれた。
 僕は胸がぽかぽかしてきたんだ。

「……よろしくお願いします」


 もう、誰も僕を縛らない。
 好きに生きていて、良いんだ。

  ◇

 その後、従兄である千聖さんに連絡が行った。
 偶然にも北摩に来訪中だった千聖さんは、すぐに来てくれた。
 葦原の皆さんが千聖さんに
 これまでの虐待の証拠等を提出してくれて、
 千聖さんは鳴宮本家に持ち帰ることになった。

 きっと良い方向になることを、信じているよ。

「……僕に色々としてきたお母さまへの、
 強い処罰を望むかって?」

「……アラストルはね、
 復讐しろって言ってるけど……」

「…………」
「……今後、もう関わってこないなら、僕はそれで」


「……それでも、嫌いになり切れないんだ」


 やっぱりあの人は、僕のお母さまなのだから。

  ◇

 奏翔は、音楽が好きなのにやめてしまったらしい。
 “好き”に一生懸命に見える君が、どうして?
 気になって尋ねて知ったのは、酷い事実で。

 何かを“好き”になることは、悪いことじゃないのに。
 “好き”に一生懸命になることは、悪いことじゃないのに。
 奏翔は、ただ“好き”を表現していただけなのに、
 それだけなのに、深く傷付けられた。
 僕が百華と大喧嘩した時に奏翔が見せた傷付いた顔の、
 その理由を知った気がするんだよ。

「──君は、悪くない」


 これだけは、言わせて。

 僕は君のその“好き”を、全力で肯定したかった。
 君のその“好き”が、好きだった。
 君を眩しく思っている。
 
 否定されて良い訳がない。
 君は、何ひとつ悪くないのに。

 僕の気持ちは伝わったかな。
 君がやってくれてたみたいに、
 君の背を撫でたんだ。

 その後、約束をさらに交わした。
 君のピアノを聴くことを、
 きちんと約束の形にして。

 ねぇ、ねぇ、もっと僕に、
 君の心からの“好き”を色々と教えてよ。
 そしたら世界がもっともっと鮮やかになる、気がしている。

「……僕の出来ることは、何だろう」


 僕は君みたいに、何かに優れてる訳じゃない。
 何をやらせても器用貧乏。勉強は君も出来るしね。
 分からない、分からない。
 あぁ、だけど。

「……せめて君の隣で、
 君の“好き”を肯定させ続けて欲しい」


 僕はそれを絶対に否定しない。
 鮮やかなもの、いっぱい教えて。