RECORD

Eno.7 瀬波 りり子の記録

夢の次の日




「うーん」

いつもの我が家、深夜。

「今日も悪夢を見たら嫌だな。
 毎朝泣きながら起きるアンドロイドがいるでしょうか。
 いるとしたら人類がすべて滅んだ世界にだけですね」

「どうしようかな。対策アイテムとか用意してないですし」

部屋を見渡す。
最低限の家具。ちょっとしたぬいぐるみ。謎の瓦のプライズ。
それだけ。

「ベタな感じでドリームキャッチャーのひとつでも
 どっかで手に入れておけばよかったかもしれません が」
「この世界ではそれは神秘本物神秘でない迷信かが
 事実という目線でははっきり二極のどちらかにあるのですね」
「信じる分には、どちらでもありうるのでしょうが」

「私はアンドロイドで、人間ではない。
 人間と違ったしくみで、人間と同じような夢を見ることを可能としている。
 そうである以上は、普通の『悪夢を見ない方法』では通用しないのかもしれない」

鏡を見る。
私の目元には、薄いクマすらない。
私の部屋には雑音も少ないし、怖い顔に見える模様もない。
怖い夢の原因になりそうなものは、どこにも。

「ああ」
「もしそうだったらいいな、という話なのですが」

鏡の向こうの赤い空に目を向ける。



「悪夢って、神秘ですか?」









そんなわけないのに、それを独りで声にするのは、
きっと、その言葉が自分を嘲笑うものでもあったからなのだろう。