RECORD
科学に必要なもの:因果性
ある事象について、その発生が別の事象に起因するものであること。
また、そのような事象間の結びつきのこと。
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何が食べたいか聞くと喜ぶ。

今日は俺がこれを食べたいと言っても、それもまた喜ぶ。
俺の料理ならなんでもいいらしい。

出来合いのものを買って帰ると嫌がる。

腹が減ると拗ねるので、三食きっちり食べないといけない。

甘いものをとても好む。

辛いものを出すと、ぬえぬえと文句は言うが、残さず食べる。

苦いものには近づかない。

暗いところが嫌い。

寒いのが嫌い。

寝る前、電気を消すと必ず俺の横に来る。

一人で寝ろよと言っても聞かない。

決して離れようとしないから、くっついて寝る。

寝息は静かで、生きているのか不安になるほどだ。

体温は高く、暖かい。

……これからの季節だと、すこし暑いかもしれない。
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クラウドに保存された、二人分の飯の写真を、だらだらとスクロールして眺めている。
今日の晩飯が思いつかず、献立を考えていたところだ。

今の俺は、すっかりあの訳の分からない生き物との生活に慣れてしまっている。
飯なんて適当に腹が減ったら食べるだけだったのに。

「つーか、なんであんなやつのためにマジで料理やってんだ俺は」

そもそも、おかしな話だ。
あんな怪しさしかないような生き物を、どうして俺は受け入れてしまったんだろう。

俺はそんな人間だっただろうか?
この俺は、動物のために進んで世話をするような人間だったか?

何が俺をこうまで変えてしまったんだ?

「随分と、仲睦まじく過ごしてらっしゃるようで。
実に虫唾の走ることです」
耳に息がかかるような近くで囁かれた声に振り返る。

「誰だ」

「コンにちは」

「私、防衛省神秘管理局特別民間協力者の、今野と申します。こちらは近藤」

「そうだぞ」

「ひとのPCを後ろから覗き込むなよ。どんな倫理観してんだ、あんた」

「これはこれは、気分を害されてしまったでしょうか?
あいにく、あなた方人間どもの醜いローカルルールなどに欠片も興味がないものでして」

「……その言い方、まさか。あんたら、人間じゃないのか」

「おやァ? 随分と動揺してらっしゃるようだ……
苦い汗の香り…… ノルアドレナリンが分泌されていますね?」

「警戒。危難。恐怖……そうでしょうそうでしょう。
得体の知れない上位存在に訳もわからず敵意を向けられているんだ、
恐ろしくてたまらないでしょうねェ……」

「おや、当たりでしたか。
ははァ、顔色を隠すのは不得手のご様子……」

「管理局が、バケモンを飼ってるのか」

「口の利き方に気をつけろよ、小僧。
その柔らかい喉笛を噛み切るのに一秒もかからんぞ」

「粗野だ……近藤くん」

「いけないよ、そんなやり方、狸じゃあるまいし。
怖がらせてどうするんだ、肉が不味くなるだけじゃないか」
粘つくような視線。
隠す気もない敵意と、暴力の香り。


「……俺に、何の用だ」

「おや、薄々気づいてらっしゃるでしょう?
直接的に申し上げなければ意図を察することもできないと?」

「直接的な物言いしか能のない、野卑た狸のような振る舞いは我々の望むところではないのですが、
小指ほどの知性しか持たない人間さんに、憐憫の心を持ってわかりやすく伝えて差し上げましょう……」

「お前の巣に逃げ込んだ、
尊いお方を返してもらいにきたんだよ、人間」
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因果性(Causality)
ある事象について、その発生が別の事象に起因するものであること。
また、そのような事象間の結びつきのこと。
出来事には必ず原因があり、その原因をつきとめさえすれば、
原因を操作することによって望む結果をもたらすことができる。
事象と事象を結ぶのは論理場を通した近接力Fcであり、
この作用によって科学は、前述の定量性によって切断した神秘を物理基盤世界へと結びつける。
Fcは固有定数kと論理場ϕL(x)、因果妥当径rを用いて、Fc=kϕL(x)/r^2と表すことが可能であり……