RECORD

Eno.691 名栗 攻介の記録

中学時代4

「ここで辞めたら今日までの頑張りが無駄になるやん」
「最後の最後に笑うために今日まで耐えてきたんちゃうんか?」

そう言って先輩とクラスメイトを引き留めたことは今でも覚えている。
そのあとに言われたことも。

その時俺を見るみんなの目は、一生忘れないと思う。
軽蔑でも憎悪でもない
ただただ理解できないものを見る、そんな目だ。

「お前が正しいと思うことが全員の正解じゃないんだ」
「主人公気取りもいい加減にしろよ。…お前といると、息苦しいよ」

そう言って部室を出るみんなの背中にかける言葉が思いつかなかった。
伸ばした手は、誰にも触れることが出来ずに空を泳いだ。

強くなれるなら、どれだけ辛くても耐えられる。
そう思っていたのは、自分だけだった。
理不尽な指導の先には必ず結果がついてくる。
そう信じて、マンツーマンとなったコーチの指導に耐え続けた。

何度吐いたか分からない。
何度暴言を受けて誰もいない部室で泣いたか分からない。
それでも言われた指示はやり切った。
そうすれば強くなれるというコーチの言葉を信じていた。

もうこの時点で、俺は自分で何かを考えるのをやめていた。

今にして思えば、その時点で結末は決まっていたんだと思う。