RECORD
Eno.494 御機嫌盗りのトージャクの記録










当初の目的を忘れ、寝起きのようにぼんやりとした男を
表世界へ送り出した後、
それはさらさらと何かを書き付けて、封をする。
朱塗りの判を付けば、そこには「請求書」の文字が据えられていた。
【帳簿】賭博毒①

「すみません、
こちらでギャンブル依存症の治療が出来ると
伺ったのですが……」

「ええ、まぁ……近いような事は」

「お恥ずかしい話なのですが……。
もう小学校へ上がる子供も居るのに
どうしても賭け事が辞められず、
妻には泣かれてしまう有り様で……」

「はあ」

「どうにか治療できないものでしょうか……」

「そうですね。
出来る、とは断言し兼ねますが……。
しかし、どうでしょう。
あんた様の身なりからして、
定職もあって、身持ちを崩すような賭け方も
なさっていないんじゃあありませんかね」

「それが……、
私もなぜ妻がそこまで賭け事を毛嫌いするのか
分からないんです」

「でしょうね」

「え?」

「いえ……仔細承知いたしました。
さぁ、こちらへお掛けになって下さい。
これから注意事項を──
いえいえ大丈夫、
お代はもう、とっくに頂いておりますから……」
当初の目的を忘れ、寝起きのようにぼんやりとした男を
表世界へ送り出した後、
それはさらさらと何かを書き付けて、封をする。
朱塗りの判を付けば、そこには「請求書」の文字が据えられていた。

「なぁに、心配要りません。
すぐですよ。きっと、すぐ……」