RECORD

Eno.142 能津 カリンの記録

能津カリンの第二歩

さて、穏やかな学生生活を送っていた能津カリンでしたが、ある時ふっと裏世界に迷い込んでしまいます。
そこで受けた説明、そして神秘管理局への所属・・・

その辺りは割愛するとして・・・。さて。自己防衛の必要・・・或いは、ある程度の【腕】が必要になりました。

しかし、勿論彼女は普通の・・・或いは、普通よりも貧弱と言っていい女子高校生です。
少しずつ体力をつける方法を覚えて、実践していきますが・・・。

武器。銃器?・・・もってのほかです。銃口をのぞき込もうとして係員に取り上げられ、やんわりとやめた方が良いと忠告されてしまいました。
剣?無理です。重たいですよ!

「ナイフならまだ何とか・・・!でも、包丁以外の刃物ってどうすれば・・・」



分かりません。どこを目指せばいいのかが。
訓練室にいる人たちは皆しっかり動けていて、しかもナイフ以上の長物や、火や氷なんかも使っています。
ちょっと変な目があるとはいえ、カリンにはとてもとても。

だから、本を調べてみる事にしました。
・・・英雄譚や、神話など。もうちょっと実践的なものを調べればいいのに、何処か浮足立った感覚があるのでしょう。
ですが、中々目的にあったものは見つかりません。

どんどん、意地になって探して、探して。


―――それと、出会いました。

「・・・【輝けぬ英雄譚】?」



それは、世間一般ではライトノベルと言われるような。
表紙は、ナイフを握った長髪の男性。
ナイフの使い方の勉強になんてならないのでしょうが、手が伸びて、ページをめくります。

 それは、世間にはあまり知られぬ英雄譚。
男の軌跡は、決して華々しい物ではなく、重く、苦しいストーリーライン。
ギャグも、愛もあれど、戦う事と、それで齎される悪名、批難。
戦う理由すら時には失い、背後に守っていた者たちからも後ろ指をさされてしまいます。
時には人類に敵対すらしてしまい、迷走とも自棄とも言える位に只管戦い続けます。

カリンは、食い入るように、読んでいきました。

辛いと、苦しいと、読んでいるだけでも思います。
でも、手が。止まりません。

ある日遂に立ち止まってしまった男ですが、それでも激動の世界は戦いに満ち溢れ、男の周囲も飲み込みます。
自分の為した事、守れなかった事、そして見える末路。立ち上がれなくなった男。

カリンの目から、次々と、ボロボロと涙があふれていきました。

―――それでも、と。
英雄と呼ばれない男は、再び。
いつしか大事になっていた、周りのものたちの為に。
悪名しか残らずとも、末路が悲惨と知っても、殺す事しか知らなかった刃を、守るための刃に"してくれた"周りのものたちのために。

次の日、カリンは寝坊しました。真っ赤な目で、大慌てで支度して、学校へ。

その胸に、熱い熱いものが、宿りました。