RECORD

Eno.276 秦 秋葉の記録

カルテNo:×× 秦 秋葉(unknown)

秦 秋葉(しん ちういぇ)。
中国出身でイギリス人の父と中国人の母を持つ。
父と母はいわゆる傭兵、何でも屋稼業であり不在がち
ある日突然、北摩市に出現。
近くにいた束都グループ職員に保護される。

出現当初は、幼いながらも自我や意識もはっきりした大人びた少女。と言われていたが
話を聞くにつれ現実と自らの意識の祖語により錯乱状態へ。
数度にわたり暴れた為、鎮静剤と自白剤に寄り鎮静化。情報を聞き出すことに。

以下はそれらを書き記したものである。

________________


・名前:秦 秋葉(しん ちういぇ)
・年齢:10歳(保護当時)
・状況:保護当時は落ち着いていたが、時間がたつにつれて錯乱が見られる
・事象:神隠しや平行世界への侵入、脱出。
・記憶:神隠し・侵入直後の記憶は曖昧だが、最中~脱出時の記憶は鮮明
   ↑要:聞き込み、記憶保護、隠蔽。
・神秘:侵入した世界で習得したものとみられる。
  その内容は本人が秘匿したがっている為不明。さらなる調査が必要。
・今後:新規に所在を生成、施設にて経過観察
・住所:××◆、◆■◎……
   ↑現在その住所は企業ビルが建設されている。
・両親:その名の人物は存在したが国籍、性別全てに相違がみられる
・欠如:一部識字能力と会話言語。
   ↑無意識化のストレスで日本語を理解しないようにしている様です。

























・…
戸籍:この世界に、上記の条件や失踪履歴。両親の存在含め秦 秋葉という少女の存在すべては認められない。










※注意事項※
帰還直後から、極度の飢餓状態が続いている。
ある程度のセーブは可能の様だがいつどれだけ食事を試しても(飲食量:◆◆◆…)満腹になるという結果は得られない。
またあれだけ食べたにも関わらず体に一切の悪影響や損害等は見られず……



記録は此処で途絶えている

これを見ているのであれば、どこかで。
彼女の何かを知っていても、きっと構わない。これはもうとっくの昔に風化してしまった情報。
























異物は、忘れ去られるべきである。






……。

ワタシは、秦 秋葉。
中国生まれ。7歳の頃に老师【ししょう】の居る見知らぬ場所に連れていかれた。
誰に連れていかれたかも、どうして行ってしまったかもわからない。
10歳になるまで、ソコで過ごした。

生まれ故郷のはるか過去、別の世界の様なその場所で。
戦い方も生き方も教えてもらった。教養も礼儀も勉強も。…いや、勉強は今とは違いすぎてあまり意味がなかったけれど。

10歳になったある日、此処に来た頃と同じ様に消えていく感覚があって、帰れるんだと思った。
だから老師たちに挨拶して、さようならして。
目が覚めたらきっとワタシを大好きな両親のいる家で目が覚めるものだと思っていたのに
気が付いたらソコは自分の知らない人種がいて、知らない言葉をしゃべって歩いている

自分を見る目が怖くてひどく暴れて、助けを求めた気がする。
そうすると、知らない注射を打たれて。終わった時周りの目がまた一段怖くなったような心地がした。

此処は、ワタシの知らない世界だった。
ワタシという存在が。父と母が存在しないという平行世界だと、ワタシを担当してくれた職員が影で漏らしていたのを聞いた。
ワタシは、元の世界から師匠の世界へ。師匠の世界からまた違う世界へ飛んでしまったのではないかとお偉い学者先生たちの話に聞き耳を立てた。



この世界に来てからお腹が、空いた。食べても食べても埋まらない、笑っても泣いても、何にも埋まらない。
…此処は、この国の昔話で言うのならば黄泉の国なのだろうか。
なら、この異世界平行世界の食べ物を沢山食べれば…。
この世界の人間だと認めてもらえるのだろうか。
ワタシは異物で、この世界には存在しない。そんな存在はないと否定されたモノ。
元の世界から捨てられてしまったのだろうか…?

この国の、言葉は難しくて。何時まで経っても覚えられない。
だから本を沢山読んで理解しないと分からない。…でも、理解ができない。

それでも、ワタシは生きていくしかない。
存在が認められなくても、もうこの世界の食べ物を食べてしまった黄泉戸喫 (よもつへぐい)
もう、帰れない。


…ワタシを、忘れないで。