RECORD

Eno.423 甘露 繋の記録

僕たちに翼があった頃

──夢を見ていた。
幼い頃から幾度か見ている同じ夢だ。
年々、その輪郭は薄くぼやけている気がする。

僕はどこかに座っていて、
その周りには水が管を通る音が絶え間なく聞こえている、そんな夢だ。

それ以上の事は、今はもう、
濃霧の向こうに消えてしまってよく分からない。

……次は、 次は   と声が聞こえる。
こんな事、今までこの夢にあったかな……?


。。。。。

「おい。兄貴」



「兄貴…ツナグ!降りんの、これから着く駅!」


なんだ、そういう事・・・・・か。
すこし大袈裟に僕の肩を叩く弟に、
「分かってるって」と声を返して鞄を肩に掛け直す。

ススム、ずっと起きてられたんだ」


「お前の分まで起きてたんだよ」



駅へ降り、改札へ向かう僕と進の背は少し違う。
僕のお気に入りの靴の底が少し高いからだ。

「入学してまだバタバタしてるのに、あんな事言われてさ。ずーっとその事を頭のどこかで考えてて……」


「それで寝れない?それはオレも同じだっての。
だからオレを目覚ましに使うのはやめろ」




僕たちの背が同じだった頃。
僕たち双子には不思議な力があって。
それを誰かがいつの間にか、『異能』と呼んだはずだった。

それは当たり前に手のひらの中に在ったのに、
高校生くらいになるとそれは急に薄れ初めて、
今ではほとんど消えかかっている。

「大人になったら完全に消えるのかな」
そんな風に名残惜しく思っていたのが最近までのこと。
これには、ちゃんと理由があったらしい。

僕らが中学生頃からSNSやより多くの人と
触れ合うようになったのが主要因だと推測された。
「ただの探し物が得意な人」なんだと
僕が世界に完全に納得された時、
この力、『神秘』は消えてしまうのだとか。

(でも、それを手放せって言われたんじゃない。
守って良いんだって!)



決して消えるのは今じゃない。
そして、これからも頑張り次第で残り続けるかもしれない。
僕は何より、それが嬉しかった。
この『神秘』が無くなってしまったら、
隣にいる進のチカラが誰の手にも負えなくなるか、
一緒に消えてしまうかのどちらかだと思う。
それは……嫌だ。

そうして『神秘』として僕は僕のチカラを認識し、
僕の生活は想像の何倍も忙しく、騒々しくなった。

「もうちょっと急ごうぜ」と、
歩調を早める進に合わせていく。
心拍数の上昇よりも先に、
何かを察知したデバイスがちらりと光っていた。