RECORD
Eno.494 御機嫌盗りのトージャクの記録
南部プレジャーシティ内、北摩競馬場。
新聞に何かを書き付ける者。
期待に胸を膨らませる者。
血走った眼でレース場を睨みながら、馬券を握りしめる者。
様々な人々が居ながらも、
その意識の大半は、パドックを悠然と歩く馬たちへと注がれ、
彼らこそがこの場の王である事を顕示していた。

その内の一人が、
ほんの気持ち程度の安馬券を持った男に声をかけた。


そうして男は、
『こんな額じゃ応援にならないかも知れませんが……』と言って、
決まり悪そうに頭を掻いた。


やや唐突に放たれた言葉に、男は思わず不思議そうに振り返る。
けれども、次の瞬間にはスタートを告げるゲート音が鳴り響き、
土煙散らす騎馬の行進が地を揺らせば、
会場は瞬く間に狂乱の渦中へと落ちて行った。
【帳簿】賭博毒②
南部プレジャーシティ内、北摩競馬場。
新聞に何かを書き付ける者。
期待に胸を膨らませる者。
血走った眼でレース場を睨みながら、馬券を握りしめる者。
様々な人々が居ながらも、
その意識の大半は、パドックを悠然と歩く馬たちへと注がれ、
彼らこそがこの場の王である事を顕示していた。

「こんにちは」
その内の一人が、
ほんの気持ち程度の安馬券を持った男に声をかけた。

「たまに見かけますけど……、
お好きなんですか?」

「ええ、いや……。
好き、と言って良いのかどうか。
でも、ふとテレビの中継を見かけたり、
こうして競馬場に足を運んだりすると……、
眼を引くというか、
堪らなく応援したくなるような気持ちが湧いて来て、
つい、こうしてまた来てしまうんです」
そうして男は、
『こんな額じゃ応援にならないかも知れませんが……』と言って、
決まり悪そうに頭を掻いた。

「ふぅん……」

「──足、もう良いみたいですね」
やや唐突に放たれた言葉に、男は思わず不思議そうに振り返る。
けれども、次の瞬間にはスタートを告げるゲート音が鳴り響き、
土煙散らす騎馬の行進が地を揺らせば、
会場は瞬く間に狂乱の渦中へと落ちて行った。