RECORD

Eno.129 瀧守 伊万里の記録

壊れた時計の次の“縁”

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伊万里 [Eno.129] 2025-05-22 12:21:21 No.307914

古物屋ふるものやで曰く付きの懐中時計を買い取って。
修繕屋でその曰くを除いてもらって。
それからいくらか経ったある日のこと。


「ん…? ああ、届いてんねぇ」

足の踏み場は座卓くらい、といった様相の部屋の中。半分は椅子として活躍している押し入れの上の段。依頼時にもらった領収書のその上に、紙と懐中時計が増えていた。

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呪物 [Eno.129] 2025-05-22 12:21:59 No.307920

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伊万里 [Eno.129] 2025-05-22 12:42:03 No.308194

「ええ何これ。うふふ、ようやったねぇ」

くすくすわらいつつ、懐中時計をつまみ上げる。あの祭りで見たテン虫だ。近くでよく見たわけではないけれど、多分、こんなものだった。

金の部分は錆が落とされつやつやのピカピカになったのに、彫り物のおかげであまりにも呪物になってしまった。

開いて見れば、針は正しい時を刻んでいる。きちんと合わせてくれたらしい。律儀ね。

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伊万里 [Eno.129] 2025-05-22 12:55:16 No.308368

わざわざ時間を一寸ずらして。動く様子や外装をしばらく眺めた後、ようやく紙の方に手をつけた。明細書だ。

「『此度、御修繕の御用命誠に有難く存じます。』
 あらご丁寧。こういう言葉も扱えるんねぇ。
 普段も使ってたらええんに」

別にいいとも悪いとも思っていないが。

「『たとえどんな因縁物になろうと、』
 せやんねぇ、もう何も居らんはずなんにこないになってるもんねぇ」

憑き物なりなんなりは、彼女にもらわれてしまったものだから。

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伊万里 [Eno.129] 2025-05-22 13:06:40 No.308477

「『彫りこんだ怪奇の様に、
  新たな因果を結ばん事を願って止みません。』
 ああね、殺したら次のになるんもんねぇ、あれ」

「前のは居ななったけど、新しくなんぞ湧いてくれたらええやんね」

「逢瀬乞い願う懐中時計、なんて。
 素敵なお名前もらってんから、それなりになっててぇ?」

己が何かを付け足すことは不可能ではないが。折角なら、自然に湧いてくれた方がいい。そちらの方が、面白いから。それだけの理由。

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伊万里 [Eno.129] 2025-05-22 13:18:38 No.308570

「そしたら押しつけに行ってよ。
 これくらい間あけてたらええでしょ大地くんも」

どれだけ間をあけようとも、相手にとってはよくないのだが。
宣言通り人にやりに行こうと、時計を懐にしまい、部屋を後にする。

紙は二枚とも宙に放り捨てられ、ひらと床のガラクタの上に落ちていたのだった。もう除けておかなくてもいいからね。

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「冥銭も要らんよ。あたし、死んだりしないもの」