RECORD
壊れた時計の次の“縁”
古物屋で曰く付きの懐中時計を買い取って。
修繕屋でその曰くを除いてもらって。
それからいくらか経ったある日のこと。
「ん…? ああ、届いてんねぇ」
足の踏み場は座卓くらい、といった様相の部屋の中。半分は椅子として活躍している押し入れの上の段。依頼時にもらった領収書のその上に、紙と懐中時計が増えていた。
「ええ何これ。うふふ、ようやったねぇ」
くすくすわらいつつ、懐中時計をつまみ上げる。あの祭りで見たテン虫だ。近くでよく見たわけではないけれど、多分、こんなものだった。
金の部分は錆が落とされつやつやのピカピカになったのに、彫り物のおかげであまりにも呪物になってしまった。
開いて見れば、針は正しい時を刻んでいる。きちんと合わせてくれたらしい。律儀ね。
わざわざ時間を一寸ずらして。動く様子や外装をしばらく眺めた後、ようやく紙の方に手をつけた。明細書だ。
「『此度、御修繕の御用命誠に有難く存じます。』
あらご丁寧。こういう言葉も扱えるんねぇ。
普段も使ってたらええんに」
別にいいとも悪いとも思っていないが。
「『たとえどんな因縁物になろうと、』
せやんねぇ、もう何も居らんはずなんにこないになってるもんねぇ」
憑き物なりなんなりは、彼女にもらわれてしまったものだから。
「『彫りこんだ怪奇の様に、
新たな因果を結ばん事を願って止みません。』
ああね、殺したら次のになるんもんねぇ、あれ」
「前のは居ななったけど、新しくなんぞ湧いてくれたらええやんね」
「逢瀬乞い願う懐中時計、なんて。
素敵なお名前もらってんから、それなりになっててぇ?」
己が何かを付け足すことは不可能ではないが。折角なら、自然に湧いてくれた方がいい。そちらの方が、面白いから。それだけの理由。
「そしたら押しつけに行ってよ。
これくらい間あけてたらええでしょ大地くんも」
どれだけ間をあけようとも、相手にとってはよくないのだが。
宣言通り人にやりに行こうと、時計を懐にしまい、部屋を後にする。
紙は二枚とも宙に放り捨てられ、ひらと床のガラクタの上に落ちていたのだった。もう除けておかなくてもいいからね。

「冥銭も要らんよ。あたし、死んだりしないもの」





