RECORD

Eno.593 遠蛇 睦巳の記録

0.始まり以前の出会い



一度目の神秘との出会いは、私の退屈な人生をさらに退屈なものへと貶めた。

もちろん私にとってそれは未知のものとの出会いだ。
知っていたはずの場所がいつの間にかそれと似た……しかし覚えのない奇妙な場所へとすり替わっていた恐怖。
そして語りかける声を探せど周りに人の気配はなく。

散々歩き回り見知った道へと戻ろうと試みてもその努力は徒労と終わり、しかしどれだけ歩いても日が沈み夜が訪れるわけでもなかった。

疲弊と未知の出来事に襲われた私は恐怖していた。
昔から生意気だとか怖いもの知らずと言われている私にも当然そんな感情は存在している。けれどあれほどの恐怖を抱いたのはいつぶりだったろうか。

それでも、語りかけてくる謎の声は私に威圧的な態度でもって尋ねた。

『お主は何故笑っている? あまりの恐怖にそれしか出来ぬか?』


……そうだ。確かに恐ろしい。けれども私は笑っていた。
何故なら、これは。

「ようやく退屈な人生を変えてくれるかもしれないものと出会えた歓喜の笑みですよ」



それが最初の出会いだった。
けれども、結局は期待外れだったのだ。
私の人生がそこから大きく変わるかというとそんなことはなかったのだから。
そして私が抱いたはずの恐怖も私に語りかけてきた者の正体を知ることで薄れ、興味も薄れていった。

私が見たあの日の光景はただの夢なのではないか。
あるいは今日まで私だけの耳に聞こえ続けるこの声は幻聴で、私は精神的におかしくなってしまったのではないか。
そんな疑念を抱きながら、相変わらず平凡でつまらない日々を過ごしていた。




それが変わるかもしれないとまた僅かに期待を抱かせたのは二度目の出会いだった。
私の物語はようやくここから始まる。……そう期待しても良いのだろうか。