RECORD
Eno.112 天降川もあの記録
#03 「More discoveries.」
起き抜けの寝ぼけ眼と動きの鈍い頭でも、大好きなサメぬいぐるみが私を見つめている事実ははっきりとわかった。
わかった上で、衝撃のあまり朝っぱらから素っ頓狂な声を出してしまったものだから、忙しいであろうお母さんを心配させてしまった。
人生でサメに驚いたのは映画で人を襲っている瞬間を目の当たりにしたのと、ぬいぐるみが我が家にやってきた誕生日の夜に次いで、今回が三度目になる。
サメの帰宅を皮切りに、いなくなったものが少しずつ戻ってくるようになった。
その大半は朝起きた時に枕元で主人の目覚めを待ち構えている。
どうやら寝ている間にひっそりと帰ってきているらしい。
そうでないものは私の身の回りにいつの間にか現れる。
ランドセル、カバン、ポケット、机の引き出し、巾着袋などなど。物を収納できる場所が殆どだ。
徐々に元通りになっていくお気に入りの品々と引き換えに、何か別のものが入れ替わりでいなくなったり、などは一切なく。
夢に見た覚えがないものまでしっかり戻ってきた辺り、私の意識や記憶がどれだけ鮮明であるかはあまり関係がないようだった。
一方で、意識的に強く思い描いたもの――大好きな靴下やスリッパ、などは少し目を離した隙に足元に転がっていた。
或いは私の意思でもっと素早く呼び寄せることができるのでは、と考えが至る頃には、既に大抵の品が揃ってしまった。
あれから一月と経たずに再び部屋を賑やかした雑貨を見たお母さんに対して、「やっぱり寂しかったから」というのはちょっと苦しい言い訳だったように思う。
サメが相変わらずベッドを我が物としている様子を見たお母さんの表情ときたら、今年一番の笑顔だった気さえする。
さすがに幾つかは段ボールに片付けるなどして綺麗にお掃除したけれど、片付き具合で言えば元の半分も減っていない。
そうして失せ物リストが役目を終えると、似たような不思議な現象に遭うこともなくなった。
結局ただ何かに振り回されただけ、という印象ばかりが強くなる。
あれは、一体何だったのだろう?
北摩のようで北摩でない、何処かに迷い込んだあの日。
無くした包帯が知らないうちに戻ってきた夏の終わり。
身の回りの物がいなくなっては帰ってくる不思議な秋。
それらしい答えは提出できても、一向に採点がなされない。
そういうもやもやした感じに包まれたまま、残りの秋が過ぎていく。
勉強を含め、色々夢中になりすぎて目を悪くしてしまったので、両親に言って眼鏡を作ってもらった。
この先何代も続いていく水色のフレーム。初代はもっと楕円のデザインだったと思う。
これがもう少し早かったなら、この眼鏡も騒動に巻き込まれていたのかも。
北部寄りとはいえ、西部に住んでいる私が束都の中学校へ進学を決めるのはごく自然な流れと言える。
通学距離の関係で自転車を用意しておこう、という話にもなった。
素直に公共交通機関を使えばいいと両親に促されても、余裕がある日はなるべく身体を動かしたい旨を伝えると、私の意思を尊重した上で無理をせずに使い分けるよう釘を刺されもした。
お店で制服の採寸をしたり、学校全体の説明を受けたりを経て、中等部の敷地を見学している最中。
不意に黒いパンツスーツの女性から声を掛けられて、同意のもと、単身空き教室に連れ込まれた。
中等部の先生か何かだろうと考えているところに、聞いたこともない単語が飛び出した。
「神秘管理局の■■■■■と申します。
天降川もあさん、あなたの身の回りで起きたことについて、聞かせてもらえないかしら」
わかった上で、衝撃のあまり朝っぱらから素っ頓狂な声を出してしまったものだから、忙しいであろうお母さんを心配させてしまった。
人生でサメに驚いたのは映画で人を襲っている瞬間を目の当たりにしたのと、ぬいぐるみが我が家にやってきた誕生日の夜に次いで、今回が三度目になる。
サメの帰宅を皮切りに、いなくなったものが少しずつ戻ってくるようになった。
その大半は朝起きた時に枕元で主人の目覚めを待ち構えている。
どうやら寝ている間にひっそりと帰ってきているらしい。
そうでないものは私の身の回りにいつの間にか現れる。
ランドセル、カバン、ポケット、机の引き出し、巾着袋などなど。物を収納できる場所が殆どだ。
徐々に元通りになっていくお気に入りの品々と引き換えに、何か別のものが入れ替わりでいなくなったり、などは一切なく。
夢に見た覚えがないものまでしっかり戻ってきた辺り、私の意識や記憶がどれだけ鮮明であるかはあまり関係がないようだった。
一方で、意識的に強く思い描いたもの――大好きな靴下やスリッパ、などは少し目を離した隙に足元に転がっていた。
或いは私の意思でもっと素早く呼び寄せることができるのでは、と考えが至る頃には、既に大抵の品が揃ってしまった。
あれから一月と経たずに再び部屋を賑やかした雑貨を見たお母さんに対して、「やっぱり寂しかったから」というのはちょっと苦しい言い訳だったように思う。
サメが相変わらずベッドを我が物としている様子を見たお母さんの表情ときたら、今年一番の笑顔だった気さえする。
さすがに幾つかは段ボールに片付けるなどして綺麗にお掃除したけれど、片付き具合で言えば元の半分も減っていない。
そうして失せ物リストが役目を終えると、似たような不思議な現象に遭うこともなくなった。
結局ただ何かに振り回されただけ、という印象ばかりが強くなる。
あれは、一体何だったのだろう?
北摩のようで北摩でない、何処かに迷い込んだあの日。
無くした包帯が知らないうちに戻ってきた夏の終わり。
身の回りの物がいなくなっては帰ってくる不思議な秋。
それらしい答えは提出できても、一向に採点がなされない。
そういうもやもやした感じに包まれたまま、残りの秋が過ぎていく。
勉強を含め、色々夢中になりすぎて目を悪くしてしまったので、両親に言って眼鏡を作ってもらった。
この先何代も続いていく水色のフレーム。初代はもっと楕円のデザインだったと思う。
これがもう少し早かったなら、この眼鏡も騒動に巻き込まれていたのかも。
北部寄りとはいえ、西部に住んでいる私が束都の中学校へ進学を決めるのはごく自然な流れと言える。
通学距離の関係で自転車を用意しておこう、という話にもなった。
素直に公共交通機関を使えばいいと両親に促されても、余裕がある日はなるべく身体を動かしたい旨を伝えると、私の意思を尊重した上で無理をせずに使い分けるよう釘を刺されもした。
お店で制服の採寸をしたり、学校全体の説明を受けたりを経て、中等部の敷地を見学している最中。
不意に黒いパンツスーツの女性から声を掛けられて、同意のもと、単身空き教室に連れ込まれた。
中等部の先生か何かだろうと考えているところに、聞いたこともない単語が飛び出した。
「神秘管理局の■■■■■と申します。
天降川もあさん、あなたの身の回りで起きたことについて、聞かせてもらえないかしら」