RECORD

Eno.7 瀬波 りり子の記録

夢の……

新生活が始まった頃、目が冴えて眠れないある満月の夜に……
いや、もう朝になる時間か。
じゃあある満月の朝に、ベッドに座る私は窓の外の空を眺めていた。

窓からは月の光が差し込んで、私ごと部屋を明るく照らしている。
私はその光を全身に受けながら、眩しく光る月を真っ直ぐに見つめる。
空で2番目に明るい星。地球から肉眼で見えるほぼ唯一の衛星。どれだけ街が明るくても見える星。
なのに自分では光っていない星。

太陽をこの目で見つめれば、いくらアンドロイドとはいえ害はある。
しかし月程度であれば、相当な長時間でなければ問題ない。
眩しく輝く満月が相手であっても、十分に見つめ合うことができる。

月から私は見えるのだろうか。
月のあなたに手が振れるだろうか。
"今"と"さっき"のどちらの方が満ちているのだろうか。

気になることがたくさん浮かび、心に書き留められていく。
見て、気になって、知って、頷く。
学びの原初たる興味を刺激する空を今日も眺めて、
ただそこに浮いているだけの星々から、勝手に成長を得ていく。
"私の星の月"も、きっとこの月のように……誰しもが同時に眺める星となるのだろう。
そうだとしたら、月には手を加えないようにしないと。
最も身近で遠い未知、たどり着けないのに手が届きそうな星。
愛しい黄色を、空に静かに浮かべたままにしないとな。



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今日も眠れず空を見る。
今日はこの時間に月は昇っていないらしく、部屋の二方向の窓のどちらからも月明かりは入らない。
形だけでも寝るためにと明かりを消した部屋には、
街のひかりのほんの端、それとつけっぱなしのエアコンのランプ、
電源タップやスイッチの光だけが浮かぶ。

部屋の中よりも少しだけ明るい空を見て……
見て、何も感じない。
眠くて何も考えられない。瞬きをすればそのまま眠ってしまいそうなほどに。
そうだとしても、眠れない。
私の乾かない目は、瞬きを必要としない。そうしたくない限り、うっかりとさえ眠れない。

星も何も浮かんでいない空が、私の視界の全てになる。
何の変化も起こることのない、目を閉じたのと変わらない景色。
これを見て何も考えないでいれば。
何も考えられなくなっていれば。

きっと、眠っているつもりにはなれるかもしれない。



私の正気の残りを示すように細い月が昇り始めたころ、
私の目もそれを真似るほどに細くなって、
私は気絶した。
これで……何日目だったっけな。



あれ。今日って学校だっけ?
わかんないや。何曜日? あれ……


何曜日だったら、学校なんだっけ……