RECORD
Eno.207 曲輪木 丑緒の記録
昔日に縹渺とすすき野の鳴く
キツッネェ・テイルズはその名の通り狐の怪奇を主とした組織であった。
元はといえば、かの大妖狐『九尾の狐』とその眷属たちによるコミュニティであったらしい。
しかし九尾の狐も、私のいない千年のうちに人間に討たれ、殺生石に封じられてしまったという。
残された妖狐たちは、九尾の狐の言いつけを守って、人間社会への浸透策をなお継続していた。
曰く、敵を知ることこそ勝利への道。
人間の用いる科学を知り、対策し、盗み、利用して、最終的に人間に勝利することを目指しているのだという。
そしてそういった戦略をとった怪奇は他にもいて、目下の宿敵は、狸による似たような組織なのだと狐は語った。
「まずは狸共です。対人間戦略において、我々キツッネェ・テイルズに比肩しうるのは、業腹ですがあの粗野な狸どもしかおりません。
しかし、我らキツッネェ・テイルズに姫が参陣なさった今、我らに抗し得るものは裏世界にも、表世界にもいないでしょう!」
「戦略……そんなものが必要なのか?」
「ははは。姫は剛毅でいらっしゃる」
狐はヒゲを揺らしてこんこんと嗤う。
「姫のおられた時代とは、戦いのありかたが違うのです。戦略なしに戦っては犬死にするのが関の山……
しかし! 姫の御力に我らキツッネェの知略が合わされば、三界に敵無し!
忌々しき人間どもにさえ勝利することでしょう!」
まるで己を奮い立たせるような口ぶりでそう宣言する狐を、他の狐たちは喝采で迎える。
……なんとも人間的なやり方だ。と、私は思う。
骨の髄まで、侵されてしまっている。
狐の言葉通り、キツッネェ・テイルズには人間の技術に関する資料が山のように保管されていた。
特に、人間が神秘に対して行使した術……『科学』についての資料は膨大で、
その中には私が封じられた時代における最先端の科学、『陰陽術』についての資料もあった。
「名付けの咒……」
「は。いやしくも我らが姫に献上した御名は、姫が卑劣な人間の奸計に敗れ、囚われるに至る物語を参考にいたしました」
「物語。あの顛末が伝えられていたのか」
「ははあ。人間どもは、姫を『鵺』と名付け恐れていた様子。
恐れは我ら怪奇の血肉となり得ます。
その名の下に自然と恐れは集い、姫が彼奴等の巣を蹂躙すれば!
再びその名は更なる恐怖の象徴として世に君臨することでしょう!」
「そうか」
己の言葉に酔うかのように恍惚とした表情でそう叫んだ狐を尻目に、私は名付けの咒と呼ばれた呪術を理解する。
なるほど、これが科学か。
これによって私は腑分けられ、無辺の黒雲から地に零落させられたのだ。
かつての全盛。
私がただの黒い雲であった頃。
私の使う力に名前などはなかった。
日が落ちて夜が来るように、生あるものがいずれ死ぬように、ごく自然な、当たり前のものとして私の力は在った。
私は天を覆い偏在し、限りのない存在であった。
私の意思の発生と同時に、力は発揮され終わっている。
そうあるものに、名前をつける必要はなかった。
名前をつけることで、その力はありようを変えてしまっていたはずだ。
形なき不可知、原初の神秘に最も近い存在であった私は、それ故に向けられた思念によってその形に影響を受けてしまうから。
名付けの咒。
それは、人間が神秘の力を紐解く中で手に入れた技術であり、解体され、道具と成り下がった神秘の亡骸であった。
ここでも、混じっている。
私はそう感じる。
狐が人を学び、混ざりものに堕したように、人もまた、神秘から学び、混ざりものへと変わっていた。
そしてその流れは今、さらに先へと進んでいる。
人の在り方と、神秘の在り方は、この1000年でより互いに入り混じり、撹拌され、均されてしまっている。
境界が薄れつつあるのだ、と私は理解する。
それが神秘の本質で、それが人間の欲望するところなのだ。
狐たちは、人間たちを恐れ、敵視するが故にその業を取り入れるということの意味を理解していない。
混じりものとして生まれ、人の社会の狭間に生きてきた存在であるから、己が既に人間社会に取り込まれていることに気づいていないのだ。
哀れな狐たち。
怪奇は、神秘は人間のみならず、獣や鳥、木々や雲。はたまた土地そのものといった遍く存在全ての思念を喰らい、己が血肉とする存在だ。
遍くとは、遍く―――我ら自身の思念でさえ、その対象であるということ。
我らが人を恐れたのなら、その恐れさえ我らの血肉となり、骨となってしまう。
それはつまり、血肉が人を前提としているということに他ならない。
相反していたはずの敵が、己の存在の前提となっていることに、狐たちは気づいていないのだ。
空を見上げる。
かつて東三条の森の内にあった真に光なき暗闇は既にこの裏世界にさえない。
表世界を鏡映しにしたようなこの裏世界を、人の建てた街灯が照らしている。
薄闇の世界。
そこに垂らされた一滴の闇、真に光なき暗闇の一端である私は、
夜の内にあってなお暗く、それ故にどこまでも異質な存在でしかなかった。
--------------------------------------------------------------------------------
狐と狸の争いは、季節が巡ってもなお続いた。
冬が十度過ぎ、秋が二十度過ぎ、夏を三十度迎えてもなお、狐は狸と相争っていた。
側から見ていた私が業を煮やし、全てを更地にしてやろうとすれば、狐どもは賢しらにそれを押しとどめ、
その代わりと言わんばかりに、小競り合いとしょうもない奪略の尻拭いを任せてきた。
私はそれを片手間に片づけ、ついでに狸の集落を焼き払おうとして、いつものように狐に止められた。
「なぜ止める」
「姫が出れば全てはおしまいです」
勿論そのために力を振るうのだと言えば、狐は首を振った。
「そうしたら、狸どもの抱える様々な知見ごと塵芥と消え失せてしまうでしょう……それでは困るのです。
我らの最終目的は、裏世界の統一と人間の打倒、そして表世界の奪還!
ここで狸の勢力を喰らい、さらに力をつける必要があるのですから」
「力ならここにあるだろう。私が出れば済む話だ」
「ははは。いつまでも姫に頼りきりではいられませんからな。
我ら自身が力をつけねばならぬのです。
キツッネェ・テイルズの繁栄……
百年の平和を築くことこそ、その力の証明となるのです」
そう嘯く狐は、己の言葉が欺瞞に満ちていることに気づいていないようだった。
ここにきてようやく私は、狐どもの真の望みを知った。
彼らの望みは一つ、現状維持。
大義を振り翳し、希望を夢見ながら、自らの意思で歩みを止め、その場から動く気がないということを、漸く理解したのだった。
「……ならば、そうするがいい。
私は、飽いた」
そして、それが狐の望みなら。
私を名で縛り、使役していた狐が、私に向かって本心からそう望んだのならば。
今の私は自由だった。
「姫様? どこへ、」
ここで得られるものは何もない。
狐の言葉を待つことなく、私は跳ぶ。
向かう先は一つだ。
数十年を経てなお薄れぬ感触を頼りに、私は駆けた。
うしおの下へ。
私はかつてうしおに望まれた姿へ変じて、うしおの気配の色濃く残る部屋の中で、うしおの帰りを待った。
しばらく待てば、懐かしい気配が戸を開ける。
うしおだ。
うしおだ!
うしおがそこにいる!
「見ての通り貧乏学者の巣だ、金目のものはない。通報しないでやるからとっとと失せ………犬?」
「とらです こんにちは」
そう名乗ったところから、私の思考がほどけるようにまとまらなくなっていきます。
それは嫌でした。
せっかく言葉を交わせるようになったのに、満足に喋れないなんて。
けれど私は、思ってしまいました。
もしもうしおが、私の正体に気づいたら。
私が、人間をきらいなきつねのなかまと知られたら、
私がぬえだとしったなら。
うしおは私を拒むのではないでしょうか?
「こんにちは。ぬえのとらつぐみです。お腹がすいたのでごはんがほしい」
わたしは、ぬえ。
そうなのっても、うまくはなせるようにもどりません。
うしおにきらわれたくないのに。
わたしは、とらつぐみ。
うしおにたすけてもらった、とらつぐみです。
「いやだね。他所をあたりな」
うしおのことばに、ぜんしんがこおりつくかとおもいました。
けれど、そうはなりませんでした。
うしおがそうのぞんだなら、そうなるはずなのに。
でも、それなら、だとしたら。
きつねがほんとうののぞみをくちにしなかったように、
うしおは、ほんとうは、いやじゃないの?
「野山でリスでもネズミでも、自分で捕まえりゃいいだろ」
「とらは戦ったり奪ったりするのにあきたから、そういうのはしないことにしたよ」
もう、そんなことはしたくない。
わたしは、とらは。
そんなものはいらないのです。
くらいみちをながれていくとらを、うしおがすくいだしてくれたときから。
ずっと、いっしょにいたいだけなのです。
「俺ァ来世でっつったんだ。いいからとっとと……」
「とっとと?」
おねがいです。
どうかおねがいします。
わたしははじめてねがいます。
うしおに、そのきもちがわずかでもあるのなら、
とらと、いっしょにいたいとおもってくれませんか。
くろいくもがぞわりとうごめきました。
「とっとと食って出ていけ。もう来るなよ」
つきのあかりがさすようでした。
うしおのことばがあんまりあたたかくて、まぶしくて。
わたしはめをとじてわらいました。
-----------------------------------------
「お迎えにあがりました、鵺様」
そして、ああ。
鵺と呼ばれたことで、私の思考を覆っていた、暖かく愛しい霞は消えてしまいました。
私に与えられた心地よい微睡みの時は過ぎ去ってしまいました。
元はといえば、かの大妖狐『九尾の狐』とその眷属たちによるコミュニティであったらしい。
しかし九尾の狐も、私のいない千年のうちに人間に討たれ、殺生石に封じられてしまったという。
残された妖狐たちは、九尾の狐の言いつけを守って、人間社会への浸透策をなお継続していた。
曰く、敵を知ることこそ勝利への道。
人間の用いる科学を知り、対策し、盗み、利用して、最終的に人間に勝利することを目指しているのだという。
そしてそういった戦略をとった怪奇は他にもいて、目下の宿敵は、狸による似たような組織なのだと狐は語った。
「まずは狸共です。対人間戦略において、我々キツッネェ・テイルズに比肩しうるのは、業腹ですがあの粗野な狸どもしかおりません。
しかし、我らキツッネェ・テイルズに姫が参陣なさった今、我らに抗し得るものは裏世界にも、表世界にもいないでしょう!」
「戦略……そんなものが必要なのか?」
「ははは。姫は剛毅でいらっしゃる」
狐はヒゲを揺らしてこんこんと嗤う。
「姫のおられた時代とは、戦いのありかたが違うのです。戦略なしに戦っては犬死にするのが関の山……
しかし! 姫の御力に我らキツッネェの知略が合わされば、三界に敵無し!
忌々しき人間どもにさえ勝利することでしょう!」
まるで己を奮い立たせるような口ぶりでそう宣言する狐を、他の狐たちは喝采で迎える。
……なんとも人間的なやり方だ。と、私は思う。
骨の髄まで、侵されてしまっている。
狐の言葉通り、キツッネェ・テイルズには人間の技術に関する資料が山のように保管されていた。
特に、人間が神秘に対して行使した術……『科学』についての資料は膨大で、
その中には私が封じられた時代における最先端の科学、『陰陽術』についての資料もあった。
「名付けの咒……」
「は。いやしくも我らが姫に献上した御名は、姫が卑劣な人間の奸計に敗れ、囚われるに至る物語を参考にいたしました」
「物語。あの顛末が伝えられていたのか」
「ははあ。人間どもは、姫を『鵺』と名付け恐れていた様子。
恐れは我ら怪奇の血肉となり得ます。
その名の下に自然と恐れは集い、姫が彼奴等の巣を蹂躙すれば!
再びその名は更なる恐怖の象徴として世に君臨することでしょう!」
「そうか」
己の言葉に酔うかのように恍惚とした表情でそう叫んだ狐を尻目に、私は名付けの咒と呼ばれた呪術を理解する。
なるほど、これが科学か。
これによって私は腑分けられ、無辺の黒雲から地に零落させられたのだ。
かつての全盛。
私がただの黒い雲であった頃。
私の使う力に名前などはなかった。
日が落ちて夜が来るように、生あるものがいずれ死ぬように、ごく自然な、当たり前のものとして私の力は在った。
私は天を覆い偏在し、限りのない存在であった。
私の意思の発生と同時に、力は発揮され終わっている。
そうあるものに、名前をつける必要はなかった。
名前をつけることで、その力はありようを変えてしまっていたはずだ。
形なき不可知、原初の神秘に最も近い存在であった私は、それ故に向けられた思念によってその形に影響を受けてしまうから。
名付けの咒。
それは、人間が神秘の力を紐解く中で手に入れた技術であり、解体され、道具と成り下がった神秘の亡骸であった。
ここでも、混じっている。
私はそう感じる。
狐が人を学び、混ざりものに堕したように、人もまた、神秘から学び、混ざりものへと変わっていた。
そしてその流れは今、さらに先へと進んでいる。
人の在り方と、神秘の在り方は、この1000年でより互いに入り混じり、撹拌され、均されてしまっている。
境界が薄れつつあるのだ、と私は理解する。
それが神秘の本質で、それが人間の欲望するところなのだ。
狐たちは、人間たちを恐れ、敵視するが故にその業を取り入れるということの意味を理解していない。
混じりものとして生まれ、人の社会の狭間に生きてきた存在であるから、己が既に人間社会に取り込まれていることに気づいていないのだ。
哀れな狐たち。
怪奇は、神秘は人間のみならず、獣や鳥、木々や雲。はたまた土地そのものといった遍く存在全ての思念を喰らい、己が血肉とする存在だ。
遍くとは、遍く―――我ら自身の思念でさえ、その対象であるということ。
我らが人を恐れたのなら、その恐れさえ我らの血肉となり、骨となってしまう。
それはつまり、血肉が人を前提としているということに他ならない。
相反していたはずの敵が、己の存在の前提となっていることに、狐たちは気づいていないのだ。
空を見上げる。
かつて東三条の森の内にあった真に光なき暗闇は既にこの裏世界にさえない。
表世界を鏡映しにしたようなこの裏世界を、人の建てた街灯が照らしている。
薄闇の世界。
そこに垂らされた一滴の闇、真に光なき暗闇の一端である私は、
夜の内にあってなお暗く、それ故にどこまでも異質な存在でしかなかった。
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狐と狸の争いは、季節が巡ってもなお続いた。
冬が十度過ぎ、秋が二十度過ぎ、夏を三十度迎えてもなお、狐は狸と相争っていた。
側から見ていた私が業を煮やし、全てを更地にしてやろうとすれば、狐どもは賢しらにそれを押しとどめ、
その代わりと言わんばかりに、小競り合いとしょうもない奪略の尻拭いを任せてきた。
私はそれを片手間に片づけ、ついでに狸の集落を焼き払おうとして、いつものように狐に止められた。
「なぜ止める」
「姫が出れば全てはおしまいです」
勿論そのために力を振るうのだと言えば、狐は首を振った。
「そうしたら、狸どもの抱える様々な知見ごと塵芥と消え失せてしまうでしょう……それでは困るのです。
我らの最終目的は、裏世界の統一と人間の打倒、そして表世界の奪還!
ここで狸の勢力を喰らい、さらに力をつける必要があるのですから」
「力ならここにあるだろう。私が出れば済む話だ」
「ははは。いつまでも姫に頼りきりではいられませんからな。
我ら自身が力をつけねばならぬのです。
キツッネェ・テイルズの繁栄……
百年の平和を築くことこそ、その力の証明となるのです」
そう嘯く狐は、己の言葉が欺瞞に満ちていることに気づいていないようだった。
ここにきてようやく私は、狐どもの真の望みを知った。
彼らの望みは一つ、現状維持。
大義を振り翳し、希望を夢見ながら、自らの意思で歩みを止め、その場から動く気がないということを、漸く理解したのだった。
「……ならば、そうするがいい。
私は、飽いた」
そして、それが狐の望みなら。
私を名で縛り、使役していた狐が、私に向かって本心からそう望んだのならば。
今の私は自由だった。
「姫様? どこへ、」
ここで得られるものは何もない。
狐の言葉を待つことなく、私は跳ぶ。
向かう先は一つだ。
数十年を経てなお薄れぬ感触を頼りに、私は駆けた。
うしおの下へ。
私はかつてうしおに望まれた姿へ変じて、うしおの気配の色濃く残る部屋の中で、うしおの帰りを待った。
しばらく待てば、懐かしい気配が戸を開ける。
うしおだ。
うしおだ!
うしおがそこにいる!
「見ての通り貧乏学者の巣だ、金目のものはない。通報しないでやるからとっとと失せ………犬?」
「とらです こんにちは」
そう名乗ったところから、私の思考がほどけるようにまとまらなくなっていきます。
それは嫌でした。
せっかく言葉を交わせるようになったのに、満足に喋れないなんて。
けれど私は、思ってしまいました。
もしもうしおが、私の正体に気づいたら。
私が、人間をきらいなきつねのなかまと知られたら、
私がぬえだとしったなら。
うしおは私を拒むのではないでしょうか?
「こんにちは。ぬえのとらつぐみです。お腹がすいたのでごはんがほしい」
わたしは、ぬえ。
そうなのっても、うまくはなせるようにもどりません。
うしおにきらわれたくないのに。
わたしは、とらつぐみ。
うしおにたすけてもらった、とらつぐみです。
「いやだね。他所をあたりな」
うしおのことばに、ぜんしんがこおりつくかとおもいました。
けれど、そうはなりませんでした。
うしおがそうのぞんだなら、そうなるはずなのに。
でも、それなら、だとしたら。
きつねがほんとうののぞみをくちにしなかったように、
うしおは、ほんとうは、いやじゃないの?
「野山でリスでもネズミでも、自分で捕まえりゃいいだろ」
「とらは戦ったり奪ったりするのにあきたから、そういうのはしないことにしたよ」
もう、そんなことはしたくない。
わたしは、とらは。
そんなものはいらないのです。
くらいみちをながれていくとらを、うしおがすくいだしてくれたときから。
ずっと、いっしょにいたいだけなのです。
「俺ァ来世でっつったんだ。いいからとっとと……」
「とっとと?」
おねがいです。
どうかおねがいします。
わたしははじめてねがいます。
うしおに、そのきもちがわずかでもあるのなら、
とらと、いっしょにいたいとおもってくれませんか。
くろいくもがぞわりとうごめきました。
「とっとと食って出ていけ。もう来るなよ」
つきのあかりがさすようでした。
うしおのことばがあんまりあたたかくて、まぶしくて。
わたしはめをとじてわらいました。
-----------------------------------------
「お迎えにあがりました、鵺様」
そして、ああ。
鵺と呼ばれたことで、私の思考を覆っていた、暖かく愛しい霞は消えてしまいました。
私に与えられた心地よい微睡みの時は過ぎ去ってしまいました。