RECORD
Eno.555 真玖部 楽の記録
家族とは、それぞれの安全基地であり、
導きや支えでなくてはならない。
それが理想的な家族の在り方だと聞いたことがある。
だが、そこが安全でなかったとしてら?
かれらの導きが過ちであったなら?
盲目的に従うのもそれはそれでいい。
自分の人生に責任を持たない自由は誰にでもある。
その時俺が考えたのは、
より正解に近い形のものを自らの手で導き出さなくてはならないということだ。
-
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-
生まれた時は、たぶん普通だった。
イタズラをすればケツを叩かれることぐらい、どの家庭にでもあるだろう。
テストで満点を取らなかったことで怒られることぐらい、どんな子供にだってあるはずだ。
だが、なんということはない。
かれらの子に対する要求を満たしてやれば、何も問題は生まれない。
品行方正、テストは常に満点。たまに担任の先生へ花束を渡す。
掃除当番は、校長先生の部屋に率先して立候補。
文句のつけようのない優等生。さぞ自慢が出来たことだろう。
『子供のため』『私はいい指導者』『愛情深いワタクシ』。
ごく普通の幸せな家庭であるかのように振舞えただろう?
しかし"人生最初の同居人"は、俺に更なる決まり事を課した。
一言で表すなら、オカルトだ。
変な色のロウソクで指先を焼いたり、両手のひらに小さな穴を開けたり、
よくわからない儀式を命じてくるようになった。
流石にバカバカしいので逃げようとしたが、
大の大人が二人そろって取り押さえてきたら、小学生の身で振りほどくことは難しい。
まあ長いこと付き合わされたさ。
後から知ったが、これは"同居人たち"が実家で行っていた儀式だったのだそうだ。
因習、迷信、歪んだ信仰。
そいつらは都会にそれを持ち込んだ。
きっとどこでもそんな感じなんだろうな、と、俺は思っていた。
たぶんどの家庭でも同じようなことがあって、
みんなそれを我慢して生きていて……
そんな"普通"はクソ喰らえだ。
無意味だった儀式を繰り返して10歳になる頃、
それは突然現れた。
空間が裏返り、ヘビー級の格闘家や相撲取りよりずっとデカい、
手足はあってもおおよそ人間には見えない何かが這い出てきた。
同居人たちの顛末は言うまでもない。
それが言うには「俺の望みを叶えた」と、言われてみれば合点がいった。
どうやら俺が同居人を始末したらしい。
化け物に関しては……退治された。
正直ガッカリした。
俺は鬼退治の専門家たちに連れて行かれた後、色々と訊かれた。
まるで俺が被害者であるかのように、かれらは応じていた。
『表と裏をひっくり返す』のは俺の力ではないが、
その力にアクセスするための鍵のようなものを、俺は持っているらしい。
ここで初めて、俺は選択肢を与えられた。
神秘を忘れ、普通の人間として生きるのか。
神秘を秘匿し、ありふれた日常を棄てるのか。
俺が何を選んだのかは、今更語るまでもないだろう?
-
-
-
家族とは、人生で最初に所属している組織に過ぎない。
それが不平等な契約のもとに運営されているものであるか、
あるいはキャリアを見込めない時間の浪費であると判断した時、
早々に替えるべきものである。
-了-
『カカン』
家族とは、それぞれの安全基地であり、
導きや支えでなくてはならない。
それが理想的な家族の在り方だと聞いたことがある。
だが、そこが安全でなかったとしてら?
かれらの導きが過ちであったなら?
盲目的に従うのもそれはそれでいい。
自分の人生に責任を持たない自由は誰にでもある。
その時俺が考えたのは、
より正解に近い形のものを自らの手で導き出さなくてはならないということだ。
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生まれた時は、たぶん普通だった。
イタズラをすればケツを叩かれることぐらい、どの家庭にでもあるだろう。
テストで満点を取らなかったことで怒られることぐらい、どんな子供にだってあるはずだ。
だが、なんということはない。
かれらの子に対する要求を満たしてやれば、何も問題は生まれない。
品行方正、テストは常に満点。たまに担任の先生へ花束を渡す。
掃除当番は、校長先生の部屋に率先して立候補。
文句のつけようのない優等生。さぞ自慢が出来たことだろう。
『子供のため』『私はいい指導者』『愛情深いワタクシ』。
ごく普通の幸せな家庭であるかのように振舞えただろう?
しかし"人生最初の同居人"は、俺に更なる決まり事を課した。
一言で表すなら、オカルトだ。
変な色のロウソクで指先を焼いたり、両手のひらに小さな穴を開けたり、
よくわからない儀式を命じてくるようになった。
流石にバカバカしいので逃げようとしたが、
大の大人が二人そろって取り押さえてきたら、小学生の身で振りほどくことは難しい。
まあ長いこと付き合わされたさ。
後から知ったが、これは"同居人たち"が実家で行っていた儀式だったのだそうだ。
因習、迷信、歪んだ信仰。
そいつらは都会にそれを持ち込んだ。
きっとどこでもそんな感じなんだろうな、と、俺は思っていた。
たぶんどの家庭でも同じようなことがあって、
みんなそれを我慢して生きていて……
そんな"普通"はクソ喰らえだ。
無意味だった儀式を繰り返して10歳になる頃、
それは突然現れた。
空間が裏返り、ヘビー級の格闘家や相撲取りよりずっとデカい、
手足はあってもおおよそ人間には見えない何かが這い出てきた。
同居人たちの顛末は言うまでもない。
それが言うには「俺の望みを叶えた」と、言われてみれば合点がいった。
どうやら俺が同居人を始末したらしい。
化け物に関しては……退治された。
正直ガッカリした。
俺は鬼退治の専門家たちに連れて行かれた後、色々と訊かれた。
まるで俺が被害者であるかのように、かれらは応じていた。
『表と裏をひっくり返す』のは俺の力ではないが、
その力にアクセスするための鍵のようなものを、俺は持っているらしい。
ここで初めて、俺は選択肢を与えられた。
神秘を忘れ、普通の人間として生きるのか。
神秘を秘匿し、ありふれた日常を棄てるのか。
俺が何を選んだのかは、今更語るまでもないだろう?
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家族とは、人生で最初に所属している組織に過ぎない。
それが不平等な契約のもとに運営されているものであるか、
あるいはキャリアを見込めない時間の浪費であると判断した時、
早々に替えるべきものである。
-了-