RECORD

Eno.625 綴喜 了然の記録

北摩市都市伝説考

 

都市伝説は、何万人もの人々を巻き込みながら延々と続く伝言ゲームのようなものである。
伝播に重要な要素として、それが真実として語られる、というものがある。
ジャン・ハロルド・ブルンヴァンによれば、
「『これは本当のことだ』として語られるのは、伝説が形成される代表的な回路」 であり、
「この事実は古くからの民話であろうと、都市伝説であろうと変わらない」。
都市伝説は、「古くからの民話と同じように、大真面目に語られ、口から口へと広がっていく」。
伝説とは、ブルンヴァン曰く、口承の歴史(Folk History)、
すなわち擬似的な歴史である。



神秘管理局局長の話によれば、怪奇は近頃になって増えているらしい。
こと、北摩市ではワケがあって・・・・・・他の土地より多い、とも。
それは何故か?その点について考えを纏めることにした。

まず、近頃になって増えている、という点に着目したい。
近頃、が具体的にどの程度の期間を指すかは語られていないが、
2000年代初頭に・・・・・・・・・北摩市が現在の形になった
とされている。これより以前は、これほど神秘事案は起きていなかったのではないだろうか?

そう考える理由は、北摩市が学園都市であるということだ。
学園都市、即ち住民の多くが学生で構成された都市。
都市伝説というものは、多くは学生の間で囁かれる。
友達の友達a friend of a friendから聞いた話が、真実めいて、実しやかに。

『これは本当のことだ』として語られるのは、伝説が形成される代表的な回路。
そして、信じるものにとって、その信仰は真である。
信仰は神を作り出す。信じる者のみが神を見る。
そうして見出されたものが、神秘や怪奇となって裏世界に溢れているのではないだろうか?



……また、アザーサイドコロニストの代表曰く、最近になって"ゆらぎ"が多発しているらしい。
"ゆらぎ"が具体的にどういった影響を起こす現象かは現状見当もつかないが、
おそらく局長の言ったワケとは"ゆらぎ"のことだろうと推測できる。
多発に至る原因までは考えも及ばないが、
やはり北摩市が学園都市である事に起因しているように思える。

なぜ全てが学園都市である事に起因すると考えるのか?
北摩市には、海も、そして大きな山も無いからだ。
それらは古くより神域、或いは異界の地とされている。
海の彼方には楽園があり、山には仙人が住む。
それら神域の地が無い地に根差す信仰があるとしたら、
それは人々の中にあるものだろう。