RECORD

Eno.671 廣 さくらの記録

廣さくらは逸見雪香を探している

 

久保田家
夕凪公園近くの住宅街にある一軒家。
以前は留学生のホストファミリーをしていた一般家庭。


久保田 寿喜
久保田家の次男。八海と廣と逸見の友達。
健康志向の旅好きでケチ。割り勘は1円単位で徹底する。


八海 仙助
久保田家の居候その1。久保田と廣と逸見の友達。
パチカスの熱血漢。パチンコ屋でバイトしている。


そばゆ
八海が連れてきた犬。ウィペットという犬種。
足がめちゃくちゃ速い。



久保田家でのハウスシェア生活が始まった。
廣は八海の部屋の隣の部屋を使わせて貰えることになった。
久保田の車を借り、数個の段ボール箱と共に廣がやってきたのも数日前のことだ。

机・ベッドは備え付けのものがあり、白物家電三種の神器などは共有で使えるものがある。
すでに久保田家にあるだろうものを思えば、持ってくるべきものはそう多くはなかった。
難度低めの引っ越し作業は、あっさりと済みつつある。
未開封の残りの段ボールは1つ。
部屋のレイアウトに満足したら中身を詰めていく予定でいる。



机の上に、一冊のアルバムとインスタントカメラがある。


カメラもアルバムも、元々は廣のものではない。
現在消息不明になっている逸見雪香に託されたものだ。


逸見 雪香
高校時代の廣の友人。現在行方不明。



高校の夏休み、廣は逸見と旅行へ行った。
カメラとアルバムは逸見がその時も使っていたものだ。
アルバムの序盤のページには彼女の撮った写真が収まっている。

『来年もどこか行きたいね』


『一緒にアルバムいっぱいにしようね、約束ね!』



その翌年、逸見と旅行に行けることはなかったが、廣はその約束を今も忘れていない。

あの時の逸見の気弱げな表情。
廣にはそれがどうにも気になった。
旅行疲れかとも思ったが、何かあったかを聞いた。
はぐらかされた受け答えが、今も耳に生々しく残っている。
どうにか『相談したいことがある』という彼女の言葉を引き出して、会う約束を取り付けた。

彼女と会う日が来る前に、逸見は消えた。
それから少しして、廣の実家に宅配便が届いた。
カレントコーポレーション系列の運送業者が運んできたのは、逸見からの荷物だった。


“私の大好きなひろちゃんへ
 約束守れなくてごめんなさい”


このように逸見の字で書かれた手紙と、彼女がこれから先も使うはずのカメラとアルバムが入っていた。

その品が届いた経緯について事情聴取されて以後、逸見の行方に関する手がかりは見つかっていない。



* * *



スマートデバイスから通知音。
このスマートデバイスは、北摩テクノポリスの学連に所属した証として学生に支給されたものだ。

そこに書かれた内容に、廣は首を傾げた。

「んんんん……?」



書かれた内容が、
あの久保田の誕生日飲み会の帰り道が、
見た現実離れした閃光が、
市役所での会話が──

夢ではなく、すべて本当のことだとしたら?

廣が最初に考えたことは
『逸見雪香をまだ探していない場所ある』ということ。

暫しの間、スマートデバイスを見つめていたが……
時計を見て、部屋を出た。一限に授業が入れてあるのだ。

「…………」




──そして 

次に廣が考えたことは、
『おそらくは逸見の母にも、そういう場所があると隠されていた』ということだ。