RECORD

Eno.1095 千花 律太の記録

話3

前提。

そういう話じゃないよ。そういう話じゃないってわかっているんだ。
だから誰も悪くない。

ただ、悪いのは俺一人。それが前提の話。



「――俺が実親に捨てられたのは、幼い俺が自由による選択を間違えてしまった結果の責任なんですか?」

そんな言葉が思わず口をついて出そうになり、慌てて飲み込んだ。
そんなことを言えば、周りの空気が明らかにおかしくなるのはわかっているから。
わかっているのに、間違えようとした自分が怖くなった。

意識していようが無意識であろうが、すべての選択は自由意志のもとにある。
そして、その結果に伴う責任はすべて自分にある。
無知なままでいることを選んで「選ばされて」痛い目に合うのも、そうなんだとして。

巡り合わせが悪かっただけなのだと言われたことも、
それさえ俺の選択のせいだというなら、俺はどうすれば間違わなかったんだろう。

少なくとも、まだ、俺は能天気でふざけた人間に見えているよね。
なんにも、なんにも間違いなんて一つも知らなそうな人間に見えていて。そうであれと祈っている。


見捨てられたくないなら、俺は自由である振りをし続ける必要がある。
それも俺の選択で、責任。


来週の講義は、『罪』について。
聞く選択をするのか。ほんの少しだけ迷った。