RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

如月という名

今日、常連のじいさんが「如月って、いい名前だな。何でそう名付けた?」って聞いてきた。いつもなら「なんとなく」で済ますけど、今日は何か、言葉が溢れた。

如月は、恋人の優の名前だ。2年前、祭りへ向かう夜、あの時の事故が俺の全てを奪った。優は病院のベッドで、俺の手を握って言った。

「困ってる人を助ける優しい人のままでいてね」

その言葉が、俺の心に焼き付いてる。

彼女の笑顔も歌声もギターの音も…全部失った。

右手の傷も、ギターを弾けない体も、優がいない世界も、全部重い。

この店、父さんの知り合いから譲られたとき、名前を変えようとした。

優を思い出すたび、胸が潰れそうだから。

でも、優の名前を残したかった。花の絵もピックのコースターも彼女が愛したものばかりだ。

裏世界の仕事は怖い。異形の怪奇との戦闘で命が削られる恐怖…でも、優の言葉が俺を突き動かす。

困ってる人を放っておけない。

彼女が信じた「優しい俺」を、 裏世界 ここでも貫きたい。

如月ここは、優との約束を守る場所だから。