RECORD
Eno.305 神楽 紗耶の記録
裏世界
今日は初めて裏世界での正式な戦闘に参加した。
私は後ろで支援することしかできないけど、人数が思ったよりも多いから
あまり苦しい思いをすることはなかった。
なかった、けど。
人込みの中に、幼馴染の姿を見つけた。
知り合いを見かけたのは初めてじゃない。クラスの人たちも何人か見かけた。
けど、彼だけはここには来ないのだと勝手に思い込んでいたものだから。
誰よりも前に立って、いろんな攻撃を受けとめていた。
傷つけたり、傷つくことなんてないと思っていた彼の両手は戦うために振るわれていた。
何かあったら守ってあげなきゃと思っていた相手は、"日常"の中だけにはいなかった。
声をかければよかったのだろうか。
いつものようにおどけて話をすればよかったのだろうか。
話したら、受け入れてくれたのだろうか。
──そんなことはない、と思う。
きっと、驚いた顔をする。ショックを受けてしまう。
私の神秘のことを知ったら、私の手を見てしまったら……
きっと、今までの関係じゃいられない。
理解してくれると思う。納得してくれると思う。
でも、なにか大事なものが壊れてしまう気がして。
私たちの関係に亀裂が入ってしまう気がして。
声をかけることはできなかった。
彼も、私に気づくことはなかった。
黒に侵された左腕が、締め付けられるように痛んだ気がした。
私は後ろで支援することしかできないけど、人数が思ったよりも多いから
あまり苦しい思いをすることはなかった。
なかった、けど。
人込みの中に、幼馴染の姿を見つけた。
知り合いを見かけたのは初めてじゃない。クラスの人たちも何人か見かけた。
けど、彼だけはここには来ないのだと勝手に思い込んでいたものだから。
誰よりも前に立って、いろんな攻撃を受けとめていた。
傷つけたり、傷つくことなんてないと思っていた彼の両手は戦うために振るわれていた。
何かあったら守ってあげなきゃと思っていた相手は、"日常"の中だけにはいなかった。
声をかければよかったのだろうか。
いつものようにおどけて話をすればよかったのだろうか。
話したら、受け入れてくれたのだろうか。
──そんなことはない、と思う。
きっと、驚いた顔をする。ショックを受けてしまう。
私の神秘のことを知ったら、私の手を見てしまったら……
きっと、今までの関係じゃいられない。
理解してくれると思う。納得してくれると思う。
でも、なにか大事なものが壊れてしまう気がして。
私たちの関係に亀裂が入ってしまう気がして。
声をかけることはできなかった。
彼も、私に気づくことはなかった。
黒に侵された左腕が、締め付けられるように痛んだ気がした。