RECORD

Eno.359 雁倉ヌヴェルの記録

3度目のテーマパークで私は失敗を犯した

多分ただ、仲良くなりたかっただけなのだろうと、思っている。

中学3年生、5月の連休のある日。
私はある男子のクラスメイトに、有名なテーマパークに遊びに行かないかと誘われた。
なぜ?と問い返すと、チケットが余ったからだ、と言われた。
私は二つ返事で頷いた。
テーマパークで遊びたかった、というよりは家族同伴でなく友人と二人きりでテーマパークに行くという珍しい体験に興味があった。
彼は私に日頃頻繁に話しかけてきていたことから、私というクラスから浮いた特異な存在がテーマパークという環境でどのような反応を示すかを観察したかったのだろう、と一人想像した。

──手、握る?


彼がジェットコースターの待機列でそう聞いてきたのを覚えている。
私は断った。列を形成する人間を数えるのに忙しかったからだ。

──好きな人、いる?


テーマパーク内のレストランで、プレートランチを頬張る合間に、彼がそう尋ねてきたのを覚えている。
私はいないと答えた。

今は理解している。
彼のような“愚か”な人間は実のところひどくありふれた普通の存在でしかないのだと。
あのとき、私と彼は、同じ場所にいながら、オーバーアザー──違う世界にいた。

彼とは最後に観覧車に乗った。そこでの問いと出来事は、ここには記さない。
そしてその日を境に、彼とは二度と喋ることはなかった。

彼の名前を私は覚えていない。