RECORD

Eno.574 深垣 明久の記録

アキヒサの記録

──学生寮、深夜、自室にて。

『──もしもし?』


「もしもし!?父ちゃんですか!?アキヒサです!やっと繋がった!」

『知ってる。デバイスの画面にお前の名前が出てる。』


「そっか!そうだよね!いつもかけまくってるんだけど、上手くいかない事の方が多いみたいで…。」
「父ちゃん、元気?ヒサは元気にやってるよ、あのね、此処もそっちとあんま文化とか文明的な?
そんなに変わらないよ。普通に神社とかあってパン屋さんもあるし、商店街もあってね…。」
「父ちゃんから貰ったカラスと話す時マニュアルを使ってなんとかカラスとお話しようかと思って頑張ってるんだけど…上手く行かなくて…。」
「そうそう、今日はね!初めて敵と戦って勝ったんだ!」
「父ちゃんそういえば、ヒサの描くカラスってペンギンに見える?」

『──。』


『一気に話すなァ!!何ひとつ聞き取れねえわ!!』


「ヒーーーン!!!」

■■■



『…そうか、今日は戦って勝ったのか、へえ。』


「ウン。頑張った。なんかさあ、白い鳥みたいなのと戦ったんだけど…。
私た……深垣ってカラスの家系でしょ?
鳥繋がりって事で、これって同族狩りにならない?」

『ならんだろ。捌いて食っちまえ。』
『…いや、バケモンだろ?食って変になったりしないよな?』


「わかんない。」

『だよなあ。食うなら一般に出回ってる食いものに留めておけよ。』


「うん。」

『…ヒサ、ところで。』
『まだ帰ってこないのか?』


「なんで!?まだまだヒサの修行は始まったばっかだよ!帰らない!」

『もう止めてさあ、こっちで普通に暮らした方がいいんじゃないのか?』
『父ちゃんと一緒に餃子専門店でもやろうぜ。きっと楽しいぞ~。』


「やだ!ヒサは強くなって、父ちゃんみたいなカラスになるって言ってるでしょ!」

『やる気に満ち溢れてるの、お前だけだぞ。』


「な…ッ!父ちゃんのバカ!怠け者!もう知らない!」
「歯磨きしてから寝てよね!お酒飲み過ぎないように!おやすみ!」

『オイ。貶すのか気遣うのか、どっちかにし──。』


ブツッ。

「…父ちゃんのバカ!!褒めて欲しかっただけなのに!!」

泣きそうになるのを抑え、ベッドに潜り込んだ。

『……。』


戦い終えて疲れて眠った少女を、枕もとのぬいぐるみだけが、労うように頭を撫でた──。