RECORD

Eno.608 五稜 拓海の記録

大学デビューの成否は大体この辺で分かる

「ほんじゃあ、今日はそろそろ帰るわ。」


「ええ、さっさと帰ってレポートでも進めなさい。」


「やかましい」


・・・ッ痛。どっこいしょ」


「・・・」


「待ちなさい。」


「ん?」


「ここに来た時から重心が少し変だと思ってましたけど、貴方怪我してません?」


「あー?気のせいじゃね?」


「・・・・・・」


「わーったよ。してる、してるよ。脇腹が軋むんだよ、折れてねえけど。」


「ハァ・・・拓海。貴方どうして早く言わないのですか?」


「別に、こんくらいヤンチャしてた頃は茶飯事だったし」


「貴方が虐められているなんて・・・」


「は?!」


「だって、貴方。ほぼ毎日ここに来ていますが友人とか居ないのではないでしょうか?」


「うっせー!おまえライン考えろよ?!ダチってほどの奴はいなくても虐められてなんかねえよ!」


「じゃあ、なんでヤンチャしてた頃のような怪我をするのですか?」


「・・・・・・」


「そのようなケガをするのは、私を追ってここに―――」


「ちげーよ。それ以上言ったら俺のポエム録音して垂れ流し続けるぞ」


「・・・・・・普通にそれは本っ当に嫌ですね。」


「お前を追ってここに来なくても、雅人のアホと地元でバカやってこうゆうケガはどうせしてたよ。」


「それに、俺はお前が好きだからここに来た。お前の為じゃない。俺がお前と居たい思ったからだよ。」


「そこ、勘違いすんなよ。俺の体より、てめえの体労われよ。」



―――――
そう言われると。
私は何も言い返せなかった。
真っすぐすぎるあの好意にどう応えたらいいのだろうか。
言い出せない。
私の体が神秘に対して強いアレルギー性の反応を起こし臓器不全を起こしているのだと。
そして、貴方が最近着実に強い神秘を帯び始め私の症状を進行させていると。
幸い、気が付いているのは私だけ。
ですが、この調子では私は次の桜を貴方と見る事はできないでしょうね。

言えば彼はきっと二度とここには来なくなる。
私に会いたい一心で自分の進路を捻じ曲げてここに来たのに、その意味を失わせてしまう。
慣れ親しんだ街を、友人たちを置いて、一人孤独に暮らす彼に私はどう報いればいいのだろうか。

「いや、私がもう彼がここに来なくなる事が
耐えられないだけかもしれません。」