RECORD
Eno.177 都成 后乃の記録
赤い水たまりが、少しずつ広がっていく。
その中に、べっとりと濡れた、違う赤色の髪が横たわる。
うつ伏せで、顔は見えない。
でも、確信があった。
今より身体が大きくて。
着ているお洋服だって違うけど。
これは。この子は、間違いなく。
「──……」
薄暗い。いつもの部屋だった。
冷たい水の、重い感触はない。
泣きそうな時みたいに、少し喉が詰まるけれど。
大丈夫。呼吸は、出来ている。
「あの日の夢……久しぶりに見たな」
あんな場所に迷い込んだからだろうか。
アザーサイド、とあの人達は呼んでいた。
ない筈のものがあって、あり得ないものが、…なんだっけ。
そう、とにかくあの場所は、あの日の池と同じだった。
どこが、というのは表しづらい。
でも、体が覚えていた。
不安だと鳴る心臓の鼓動も。目を逸らせと眼裏を支配するような脳の警鐘も。
何の根拠もない筈なのに、『ダメ』な何かが、直ぐそこにある。
そう、私に伝えるみたいな。
まだ鳴り始めていなかったアラームを止めれば、
淡く光るデバイスの画面が、時刻を映し出す。
いつも起きる時間よりも、少し早い。
起きるか決められないままに画面を見ていると、
昨日話した、市の人の言葉を思い出す。
「神秘、か」
神秘だなんて、ずっと綺麗なものにしか使わない言葉だと思っていたのに。
今ではもう、ああ言ったものすらも含む言葉だと、理解してしまっている。
そしてその上で、私が改めて何をすべきなのかも。
神秘を守るお手伝いなんて、正直どうでもいい。
あなたを神秘から守れるのなら、ただそれだけで。
「アスタちゃん……」
デバイスを握った手を、祈るように包み込む。
あの日、水面に映った彼の死の訪れ。
それが始まるのが『ここから』なのだと、そう確信したからこそ。
「絶対に。ぜったいに、まもるよ」
あの日から絶えず抱き続けて来た決意を、そう唇に乗せた。
水面の夢
赤い水たまりが、少しずつ広がっていく。
その中に、べっとりと濡れた、違う赤色の髪が横たわる。
うつ伏せで、顔は見えない。
でも、確信があった。
今より身体が大きくて。
着ているお洋服だって違うけど。
これは。この子は、間違いなく。
「──……」
薄暗い。いつもの部屋だった。
冷たい水の、重い感触はない。
泣きそうな時みたいに、少し喉が詰まるけれど。
大丈夫。呼吸は、出来ている。
「あの日の夢……久しぶりに見たな」
あんな場所に迷い込んだからだろうか。
アザーサイド、とあの人達は呼んでいた。
ない筈のものがあって、あり得ないものが、…なんだっけ。
そう、とにかくあの場所は、あの日の池と同じだった。
どこが、というのは表しづらい。
でも、体が覚えていた。
不安だと鳴る心臓の鼓動も。目を逸らせと眼裏を支配するような脳の警鐘も。
何の根拠もない筈なのに、『ダメ』な何かが、直ぐそこにある。
そう、私に伝えるみたいな。
まだ鳴り始めていなかったアラームを止めれば、
淡く光るデバイスの画面が、時刻を映し出す。
いつも起きる時間よりも、少し早い。
起きるか決められないままに画面を見ていると、
昨日話した、市の人の言葉を思い出す。
「神秘、か」
神秘だなんて、ずっと綺麗なものにしか使わない言葉だと思っていたのに。
今ではもう、ああ言ったものすらも含む言葉だと、理解してしまっている。
そしてその上で、私が改めて何をすべきなのかも。
神秘を守るお手伝いなんて、正直どうでもいい。
あなたを神秘から守れるのなら、ただそれだけで。
「アスタちゃん……」
デバイスを握った手を、祈るように包み込む。
あの日、水面に映った彼の死の訪れ。
それが始まるのが『ここから』なのだと、そう確信したからこそ。
「絶対に。ぜったいに、まもるよ」
あの日から絶えず抱き続けて来た決意を、そう唇に乗せた。