RECORD

Eno.1177 犬神ミサキの記録

無題のページ

「ワタシ、キレイ?――」

我ながら承認欲求をこじらせすぎていると思う
そのくせ口を見せて否定されると持っている刃物で切りつけてくる
包丁やハサミはいい、鉈やノコギリは口を同じように裂くだけにしては殺意が高すぎやしないか。
厄介な女にもほどがある。

そんな都市伝説も今は昔
有名になりすぎた。そして情報の伝達が早くなりすぎた。

知らない人にいきなり声をかければ包丁なんて見せるまでもなく事案になる
口裂け女が出たなんて話は日付が変わるのを待たずにSNSを駆け巡る
100メートルを5秒で走る私よりも早い速度で
10分と待たずに近くをパトカーが徘徊する
二人組四人組の警官が目を光らせる

人を驚かせることで怪奇としての自己を確率しているのであれば
人を驚かすことが出来ない世界で怪奇は生きていけるのか

結論から言えば無理だった。
どこかの山奥や因習の残る村の怪奇であればあるいは生き残れたかもしれない
けれど私は都市伝説だった。
多くの人の住まう場所に出没する怪奇だった。

出没する場所も、持っている刃物も、着ているコートの色も
何もかもが噂で作られた怪奇ワタシ
都市伝説として完成してしまった時点でワタシは死んだも同然だった。

有名だから、調べられる。
有名だから、ネタにされる。
有名だから、気づかれる。
有名だから、怖くない。

恐怖からかけ離れてしまった私は、気がつけば郊外の北摩ここまで流れ着いていた
神秘の満ちた世界、似たような存在
ただ徘徊するだけで、たまにいる神秘の塊のような怪奇を斬りつけることで
自己を保てた。

誰かを驚かす手間なんていらない。
警察を呼ばれるリスクもない。
ここならばただ戦うだけで、
ただ存在するだけで生きられる
存在に縛られない自由がある。

だから、表では出来なかったことをやってみようと思う。
まずは、人目を気にせずにこのあたりを散策するところから