RECORD

Eno.559 赫岬理恵子/理恵奈/理恵美の記録

赤い靴の群れ──想いの宿る間

学校についている建物──チャペルにたまに通うのがすき。

建物は好き。人の思いが形になっているから。
チャペルは特に好き。その文様に、願いがあるから。

たとえば、ステンドグラス。
青と赤と金のかけらが、朝によって床に光の絵を描く。
誰かが見てくれるようにって、
空の向こうに祈りが届くようにって、ずっとそこにいる。

壁の石は冷たいのに、削られた模様はやさしくて、
柱はまっすぐ高くて、でも重たくない。
天井は星のかたちをしている。
天使信仰の人たちは、たぶん、あそこに誰かが来るって思ってる。
わたしはそれがすき。
来るか来ないかじゃなくて、来てくれるって信じてる、その形が。

もちろんチャペル以外も好き。
たとえばカフェ。
入ってすぐの棚の角が丸く削られていて、壁紙がやわらかい色で、
柱の太さがちょうど、誰かがもたれたくなるくらいにしてあって、
光がさす窓のまわりだけ、木の目がそっと揃えられている。

「ここにいていいよ」って、建物が言っているみたいで、
そんなふうに、誰かを迎えようとしている姿が好き。

私の与えられた家も、そう。
少し傾いた床も、古い梁も、すこし低い天井も、
全部が「暮らすこと」を忘れていなくて、
誰かが誰かと一緒にいたかった形をしている。

それに彼ら──建物は、減らない。
世界の、愛しい人々の生きる証として、ずっとそこにある。
それが、とっても好ましい。