RECORD
Eno.51 相馬 鼎の記録

子供の頃、俺は自分が将来大学を出て法律家になると思っていた。そう描いていた。
なぜか、という問いかけの部分にはこう回答できる。
「親がそうだったから」
よくある話。
家族関係はきわめて良好だった。
両親は尊敬できるし、人間の兄弟はないが優しくて大きな犬がいた。


今も実家には犬がいる。
俺が言い出して飼い始めた二代目の犬が。
自分で言い出したのに、上京したせいで一緒にいてやれないのが心苦しい。
閑話休題。
俺の家は地元ではかなり富裕なほうだった。それでいてひとりっ子だったので少し甘やかされた自覚はある。恵まれていた自覚もある。
ありがたいことに経済的不自由は感じたことがない。今でも。
成績もよかった。
大抵のわからないところは母が教えてくれたし、成績がよいと両親とも嬉しそうにしてくれた。
俺は彼らの自慢の息子でありたかった。
勉強は苦ではなかった。
もちろん外に友人もいた。
田舎の学校で、子供の数自体さほど多くはなかったのもあったか。大抵の人とはある程度良好な関係を築けていた、と信じたいな。
ときおり周囲の人間から感じる羨望と嫉妬の入り混じった眼差し、媚びた声音。
あまり気にしたことはなかった。所詮は閉じたコミュニティ内での話だし、実害もない。
俺は幸福だった。


終活

たまには身の上話でもしようか。
子供の頃、俺は自分が将来大学を出て法律家になると思っていた。そう描いていた。
なぜか、という問いかけの部分にはこう回答できる。
「親がそうだったから」
よくある話。
家族関係はきわめて良好だった。
両親は尊敬できるし、人間の兄弟はないが優しくて大きな犬がいた。

「犬は俺が小学生の頃に死んでしまったのだけれど」

「最期まで俺の最も身近な親友であり、頼れる兄でもあった」
今も実家には犬がいる。
俺が言い出して飼い始めた二代目の犬が。
自分で言い出したのに、上京したせいで一緒にいてやれないのが心苦しい。
閑話休題。
俺の家は地元ではかなり富裕なほうだった。それでいてひとりっ子だったので少し甘やかされた自覚はある。恵まれていた自覚もある。
ありがたいことに経済的不自由は感じたことがない。今でも。
成績もよかった。
大抵のわからないところは母が教えてくれたし、成績がよいと両親とも嬉しそうにしてくれた。
俺は彼らの自慢の息子でありたかった。
勉強は苦ではなかった。
もちろん外に友人もいた。
田舎の学校で、子供の数自体さほど多くはなかったのもあったか。大抵の人とはある程度良好な関係を築けていた、と信じたいな。
ときおり周囲の人間から感じる羨望と嫉妬の入り混じった眼差し、媚びた声音。
あまり気にしたことはなかった。所詮は閉じたコミュニティ内での話だし、実害もない。
俺は幸福だった。

「………………」
「今でもそう。概ね」

「きっと、最期までそう」