RECORD

Eno.276 秦 秋葉の記録

秦 秋葉は人が好きである



私は、定期的に人に忘れ去られる
ソレは、関わりの薄い者からであり適当に遊んでいる人から順番に。
始めはワタシがこの世界に来て初めて友達になった女の子。
施設で引き取り手が決まって疎遠になって。久しぶりに連絡したら「誰?」と言われた。

おかしいな、でも忘れてしまってもしょうがないと思って
施設の事も沢山聞いたら全部覚えていた。…私の居た形跡だけぽっかりと抜け落ちていて
その子も、話していくうちに“誰か”が居た事までは思い出してくれたけれど…。
……1~2年でそこまで忘れてしまうのだろうか。
事実確認のためにその子と沢山話した後、「連絡してくれて有難う」とそれでも怖いから二度と連絡してこないでほしいと言われた。

2人目は同じ施設の先生。
やっぱり施設から出て疎遠になって後。施設に見知らぬ記憶があるという事で
連絡がやってきて判明した。1人目のあの子と一緒で全部ぽっかり消えていた。
そこから、…研究機関へ問い合わせた。
最初にワタシがこの世界に来た時にお世話になった場所。
ワタシが覚えている人も沢山いたのに、全員ワタシを初めて見たみたいな顔をしていたのを
今でもはっきり覚えている。


そのころには、ワタシはある程度大きくなってて。
泣く事も騒ぐこともなかった。だってまぁ。異物なんだからしょうがないって。
でもただ記憶から消えていく事は嫌で。覚えていてもらう事も何度だってやった。
いつも、バカやってお腹空いている秦秋葉。
ソレはワタシの…素の性格だけど忘れられないために誇張する処世術。
阿呆なピエロになって、声も不快過ぎない様それでもワァワァ叫んで騒いで
「またやってるよ」なんて思われる様。
すぐに、何かしていたら秦秋葉だって思われる様、何でもできる。


だってワタシ、今のこの世界に生きてるの。生きていたい。
友達だって居場所だってあるのに。この世界でもう6年も暮らしてきたんだぞ。
……、忘れられる前までは優しい人たちだったんだ。世界が怖くて世界に認められなかったけど、それでも…それでもワタシを拾ってくれてた人達は全員優しかった。
特に、特に忘れられたくない人だっている。


「放っておけない、捨て置けない。危なっかしいけどワタシが大好きな親友。」
「お互いに利己的で打算的で、でも形の違う同じ痛みを抱えた可愛い女の子。」
「…いつもワタシをからかって、あんまり気に食わないけど、優しいバカ虎。」



他にも、いっぱいいっぱい大好きな人が場所があるの。
ケンゴも、イッシンも、シロウサギもクロヨも他に関わってくれた人達全部全部大好き。
本人にはまだちょっと恥ずかしくて言えないけれど。
でも、世界はソレを許さない。ワタシはこの世界には存在しない異物だから。
きっといつかこの世界から正式に追い出されるのだろう。
いつか分からない、明日か明後日か。それとも今か。
だからワタシは誰とも一緒に居れない。普遍に…なれるかな。
月霧ヨスガが解明しと言ってくれた言葉、そこにいると雪見雪姫に誓った言葉、諦めるなと言ってくれたトラの心。
全部、全部わかっているの。でも、もう疲れちゃった。
私、まだ16歳だよ。子供だよ。



…私、どうしたらいいんだろう。
今日、また人に忘れられた。…関わりが薄くなっているとは思わなかった人だった。
…だからクラス安全地帯に逃げ込んだ。
ちょっと拗ねた、みたいになったけど今日だけは許してね



「ワタシ、どうやったら生きていて存在していて良いのカナ。」