RECORD
Eno.67 黒井 瞳の記録
『白いチューリップ』
いつから好きになってたんだろ
プールの時?
あのファミレス?
それとも
今日は映画館に来た。
見る映画の内容は前に見た映画の続きで、最終章らしい。
授業が終わった後、集合するまで時間があったから、一旦寮に戻って準備した。
シャワーを浴びて、私服に着替えて、メイクして。
映画見に行くってだけなのに、変に気合入れたりしちゃって。
気持ち早めに来ちゃったから、スマホで時間潰してた。
WaveD見たり、SURF見たり……
そうしてるうちにしっきーが来た。
不藤識、1年生の時から仲の良い男子。
次も一緒に映画見に行こうね、って約束してたの。
今日は珍しく私服姿、プールの時みたいに髪を遊ばせて、ピアスにネックレスまでしてた。
バイト代が貯まったから買ったんだって黒の革ジャンを自慢するしっきーは、なんだか少しかわいく見えて。

似合ってるか聞かれたから、本心を言っといた。
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お返しに、あたしのことを褒めてくれた。
……すごく嬉しかった。
受付を終わらせて、ジュースを買って、いざスクリーンの前へ。
予約した席に二人並んで座って、映画を見た。
……しっきーは映画に釘付けだったね。
その後は、ファミレスで感想会。
アクションがどうとか、ストーリーがどうとか。
前と同じように、料理を食べながら映画の話で盛り上がった。
……緊張で料理の味なんてほとんど分かんなかったけど。
感想会の後、公園に行った。
何か話でもあるのかなって思ったら――
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いつからだろう
いつも感じる心地よさに“恋”をしていたのは。
もしかすると、ずっと前からだったのかもしれない。
自覚できてなかっただけなのかもしれない。
でも、手を伸ばすにはもう遅くて。
痛みを感じるぐらい
その事実に心がギュっと締め付けられた。
何をどうすればいいか聞かれても、思い浮かばなかった。
真っ白になった頭の中じゃ、何も考えられなかった。
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ごめんね、何もアドバイスできなくて。
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しっきーは悪くないよ。
正しい道を進んでるはずだから。
だから、そんな顔しないで。


ごめんね。
涙、堪えきれなくて。
今は、上手く笑えないや。
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謝っちゃダメだよ。
それでいいんだから。
自分の答えに、自信を持って。




あぁ
もしもこの気持ちに
もう少し早く気付けてたら
そうすれば
ずっと不藤識の隣にいられたのかな
プールの時?
あのファミレス?
それとも
今日は映画館に来た。
見る映画の内容は前に見た映画の続きで、最終章らしい。
授業が終わった後、集合するまで時間があったから、一旦寮に戻って準備した。
シャワーを浴びて、私服に着替えて、メイクして。
映画見に行くってだけなのに、変に気合入れたりしちゃって。
気持ち早めに来ちゃったから、スマホで時間潰してた。
WaveD見たり、SURF見たり……
そうしてるうちにしっきーが来た。
不藤識、1年生の時から仲の良い男子。
次も一緒に映画見に行こうね、って約束してたの。
今日は珍しく私服姿、プールの時みたいに髪を遊ばせて、ピアスにネックレスまでしてた。
バイト代が貯まったから買ったんだって黒の革ジャンを自慢するしっきーは、なんだか少しかわいく見えて。

「うん、似合ってる」
「かっこいいよ」
似合ってるか聞かれたから、本心を言っといた。
「そっか、ありがとね。あきらも凄く似合ってる」
お返しに、あたしのことを褒めてくれた。
……すごく嬉しかった。
受付を終わらせて、ジュースを買って、いざスクリーンの前へ。
予約した席に二人並んで座って、映画を見た。
……しっきーは映画に釘付けだったね。
その後は、ファミレスで感想会。
アクションがどうとか、ストーリーがどうとか。
前と同じように、料理を食べながら映画の話で盛り上がった。
……緊張で料理の味なんてほとんど分かんなかったけど。
感想会の後、公園に行った。
何か話でもあるのかなって思ったら――
「あきらに相談したいことがあるんだ」
「……恋愛関係で」
「好きな人ができたんだよ」
いつからだろう
いつも感じる心地よさに“恋”をしていたのは。
もしかすると、ずっと前からだったのかもしれない。
自覚できてなかっただけなのかもしれない。
でも、手を伸ばすにはもう遅くて。
痛みを感じるぐらい
その事実に心がギュっと締め付けられた。
何をどうすればいいか聞かれても、思い浮かばなかった。
真っ白になった頭の中じゃ、何も考えられなかった。
「……ごめんっ」
「あたしには、分かんない……」
ごめんね、何もアドバイスできなくて。
「……そっか」
「うん、分からなくても……大丈夫だから」
「……ケンゴにも言われたんだよね。『迷うな』って」
「だから、俺はね。俺の選択に後悔はしてないんだ」
「……してなかった、はずなんだけどね」
しっきーは悪くないよ。
正しい道を進んでるはずだから。
だから、そんな顔しないで。

「……しっきーは、間違ってないよ」

「よすがのこと、好きなんでしょ?」
ごめんね。
涙、堪えきれなくて。
今は、上手く笑えないや。
「……ごめんよ」
「あきらの事は大切だけど」
「好きなのは、よすがだ」
「諦めたく、ない」
謝っちゃダメだよ。
それでいいんだから。
自分の答えに、自信を持って。

「うん、諦めちゃだめ」

「絶対に、放しちゃだめだよ」

「幸せになって」

「あたしのことは、気にしないでいいから」
あぁ
もしもこの気持ちに
もう少し早く気付けてたら
そうすれば
ずっと不藤識の隣にいられたのかな