RECORD
Eno.568 伊達白金の記録
伊達白金と裏世界の戦い
「……っし!おつかれっす!」
怪奇の撃破とともに、悪寒が和らぐ。
伊達白金は、どうやら戦えている。
戦えて、しまっている。
一般人代表のような生活をしていた、十把一絡げの学生が。
ろくに喧嘩もしない(できない)モヤシ男子が。
非日常の坩堝たるこの裏世界で。
平然と、拳を振るうことができている。
神秘に縁のある血筋にも才覚にも恵まれず。
怪奇に初めてまみえた直後は震えもした。
抗う術のない、助けを待つ者の側であった。
そのような自分をつかまえて、相棒になってくれと持ちかけたのは、
同じ学年の天月みつき。
自分が持ち得なかった血筋と才覚を供えた彼女が、
どうして自分を選んだのかはわからずじまいだが、
その提案が伊達白金を救ったのは間違いない。
天月がヒーローに見えた。
※女子だからヒロインだろとか野暮なことはいいっこなしだ。
神秘管理局で借り受けた装備は、ハッキリ言えば胡散臭い出自だった。
もともと扱いが難しく、長らく使い手の現れなかったものを改良中で、
テスターを募集していたところにたまたまマッチングしたとのこと。
機械仕掛けの巨大な左腕と、AI内蔵のプロテクターが一体化したウェアラブルツール、
分類としてはパワードスーツに近い物品だろうか。
ただし、科学で説明できない技術をこれでもかと導入しているのが実にオカルト。
例えば『浮遊する神秘を宿した物品を内蔵して重量を相殺する』などという理論。
例えば『神秘で殴れば神秘にもダメージを与えられる』などという理論。
素人だが、変なことを言っているのだけは理解できた。
こんなものを多摩科連のOBがプロジェクトチームを組んで開発していて、
なおかつ一定のエビデンスを構築しているというのだから頭痛い。
伊達白金の不安をよそに、この装備は見事に怪奇を撃退してみせた。
電気刺激により筋肉を収縮させる機能とAIが連動し、
受け身や回避行動を頭で考えるよりも素早く実行させる。
この補助により、伊達白金は素人でありながら一線級の格闘戦をこなせている。
代償は全身の筋肉痛だ。
電気刺激で筋肉を強制的に動かす、いわゆるEMS腹筋パッドと同じ理屈である。
当然モヤシ男子の貧弱な筋肉は悲鳴を上げるわけで。あとは推して知るべし。
身体づくりが当面の課題ではあるが、ともかく伊達白金は戦う術を得た。
怪奇であろうと触れられれば撃退できる。
自分の意志で、怪奇に立ち向かうことができる。
超常の世界は実在し、しかも自分はそこに干渉できる立場を得た。
抗うことができる。助けを待つ者に手を差し伸べることもできる。
さながら、ヒーローの真似事だ。
いま伊達白金を衝き動かす衝動は、
昂揚感そのものである。
装備の助けもあろう。
感覚の麻痺もあろう。
かつての恐怖はとうに塗りつぶされ、日々憧憬に向けて手を伸ばす。
結局のところ、伊達白金は、ヒーローになりたかったのだ。
他方、伊達白金には信念がある。
『ヒーローは、いつまでもヒーローでいてはいけない』
人を護るため。悪をくじくため。
どのような理由があろうとも、ヒーローとは戦う者。
戦う相手を倒し尽くしたとき。戦う必要がなくなったとき。
ヒーローだけが残り続ければ、それは対象を失った暴力装置となる。
ヒーローが必要であるならば、その世界は平和ではないということだ。
だから、ヒーローは、いつまでもいてはいけない。
戦いが終われば区切りをつけて、平和の一部に戻るべきなのだ。
いつまでも超常の世界に留まらないために。
区切りをつけて日常へと帰るために。
伊達白金は、戦いの後に挨拶を残すのだ。
「おつかれっした!」
怪奇の撃破とともに、悪寒が和らぐ。
伊達白金は、どうやら戦えている。
戦えて、しまっている。
一般人代表のような生活をしていた、十把一絡げの学生が。
ろくに喧嘩もしない(できない)モヤシ男子が。
非日常の坩堝たるこの裏世界で。
平然と、拳を振るうことができている。
神秘に縁のある血筋にも才覚にも恵まれず。
怪奇に初めてまみえた直後は震えもした。
抗う術のない、助けを待つ者の側であった。
そのような自分をつかまえて、相棒になってくれと持ちかけたのは、
同じ学年の天月みつき。
自分が持ち得なかった血筋と才覚を供えた彼女が、
どうして自分を選んだのかはわからずじまいだが、
その提案が伊達白金を救ったのは間違いない。
天月がヒーローに見えた。
※女子だからヒロインだろとか野暮なことはいいっこなしだ。
神秘管理局で借り受けた装備は、ハッキリ言えば胡散臭い出自だった。
もともと扱いが難しく、長らく使い手の現れなかったものを改良中で、
テスターを募集していたところにたまたまマッチングしたとのこと。
機械仕掛けの巨大な左腕と、AI内蔵のプロテクターが一体化したウェアラブルツール、
分類としてはパワードスーツに近い物品だろうか。
ただし、科学で説明できない技術をこれでもかと導入しているのが実にオカルト。
例えば『浮遊する神秘を宿した物品を内蔵して重量を相殺する』などという理論。
例えば『神秘で殴れば神秘にもダメージを与えられる』などという理論。
素人だが、変なことを言っているのだけは理解できた。
こんなものを多摩科連のOBがプロジェクトチームを組んで開発していて、
なおかつ一定のエビデンスを構築しているというのだから頭痛い。
伊達白金の不安をよそに、この装備は見事に怪奇を撃退してみせた。
電気刺激により筋肉を収縮させる機能とAIが連動し、
受け身や回避行動を頭で考えるよりも素早く実行させる。
この補助により、伊達白金は素人でありながら一線級の格闘戦をこなせている。
代償は全身の筋肉痛だ。
電気刺激で筋肉を強制的に動かす、いわゆるEMS腹筋パッドと同じ理屈である。
当然モヤシ男子の貧弱な筋肉は悲鳴を上げるわけで。あとは推して知るべし。
身体づくりが当面の課題ではあるが、ともかく伊達白金は戦う術を得た。
怪奇であろうと触れられれば撃退できる。
自分の意志で、怪奇に立ち向かうことができる。
超常の世界は実在し、しかも自分はそこに干渉できる立場を得た。
抗うことができる。助けを待つ者に手を差し伸べることもできる。
さながら、ヒーローの真似事だ。
いま伊達白金を衝き動かす衝動は、
昂揚感そのものである。
装備の助けもあろう。
感覚の麻痺もあろう。
かつての恐怖はとうに塗りつぶされ、日々憧憬に向けて手を伸ばす。
結局のところ、伊達白金は、ヒーローになりたかったのだ。
他方、伊達白金には信念がある。
『ヒーローは、いつまでもヒーローでいてはいけない』
人を護るため。悪をくじくため。
どのような理由があろうとも、ヒーローとは戦う者。
戦う相手を倒し尽くしたとき。戦う必要がなくなったとき。
ヒーローだけが残り続ければ、それは対象を失った暴力装置となる。
ヒーローが必要であるならば、その世界は平和ではないということだ。
だから、ヒーローは、いつまでもいてはいけない。
戦いが終われば区切りをつけて、平和の一部に戻るべきなのだ。
いつまでも超常の世界に留まらないために。
区切りをつけて日常へと帰るために。
伊達白金は、戦いの後に挨拶を残すのだ。
「おつかれっした!」