RECORD

Eno.83 大御門 錦慈の記録

無題




母が言うには、
僕は異様な場で授かった子供……らしい。

立派な家に嫁いだのに子宝に恵まれず、
苦しい思いをしていた母は日々とある神社に通って
毎日のように"元気な男の子を授かりますように"と願っていた。
晴れている日も、雨が降る日も、雪の日も、毎日。

そうして願っている時ふと、
見知らぬ空の下に辿り着いたらしい。
目の前にはいつもの神社。
ただ、真っ赤に燃えるような空の下にある神社は
異様な雰囲気を放っていたんだとか。

それでも母親はそこに神がいるのを信じて祈った。
子供が欲しい。どうか男の子を授けて欲しいって。

熱心に拝んでいた顔を上げればいつもの空の下。

いったいあれは何だったのだろう、
夢でも見ていたのだろうかと戻った母は
その次の日に妊娠していることが発覚したんだって。

そのせいか僕を
神が授けてくれた子に違いないと母は信じてしまった。
思い込んでしまった。

母にとって僕は特別な子供なんだそうだ。




……思い込みって、すごいよね。
どちらかと言えば不気味な話だと思うけど、
母やみんなにとっては素敵な話みたいなんだ。

まあ、みんながそれでいいならいいんだけど。
きっと全部母の作り話だと思うんだけどな。

だって僕には何一つ特別なところがない。

あの話はちょうど偶然が重なったり、
単なる妄想による産物に違いないよ。

特別に思いたいなら、そう思ってくれて構わないけどね。
ちゃんとそう見えるように努力してみせるからさ。





何でみんなの願いを叶えたがるのか
何で自分の願いを叶えようとしないのか

そんなこと、聞かれてもな

むしろ何で僕の行動を肯定してくれないのか
この在り方を応援してくれないのか

わからないんだよね

僕って何か悪いことしてる?