RECORD
Eno.89 向井有里の記録
無我
そこにはたくさんの人の足跡とことばがありました。
わたしはただ、そこを歩いていました。
途方もなく、永久に続く道に、
足跡をつけて、ただ遠くへ、遠くへと。
わたしには、そこにいた理由も、
そこに来る前のことも、なにもわかりませんでした。
いつの間にか、そこにわたしは在って、
何も求めることもなく、彷徨っていました。
やがて、たくさんのことばの導きをたどって
光が差し、鳥が飛ぶところ――出口を見つけて、
わたしはその迷路から抜け出したのです。
* * *
その先でまず出会ったのは――

変な侍みたいな動物が待ち構えてたんです!!!!!
そいつはわたしの肩に登ったあと、
ほっぺを何度もべしべしと叩いてきたんです!
なんなんですか!?
ここはこの動物が支配している国なんですか!?



そう鳴くと今度は頭をべしべしと殴られ、
――閃光が走る。
記憶が刺すように流れ込んできて、
けれどそれらはあいまいで、ぼやけて、よく見えない。
ただ唯一はっきりと見えた――
――ごめんねごめん わたしはぬけがら
――ことばだけでも おぼえてほしい
記憶のなかの「わたし」は、そう言っていた。
わたしはただ、そこを歩いていました。
途方もなく、永久に続く道に、
足跡をつけて、ただ遠くへ、遠くへと。
わたしには、そこにいた理由も、
そこに来る前のことも、なにもわかりませんでした。
いつの間にか、そこにわたしは在って、
何も求めることもなく、彷徨っていました。
やがて、たくさんのことばの導きをたどって
光が差し、鳥が飛ぶところ――出口を見つけて、
わたしはその迷路から抜け出したのです。
* * *
その先でまず出会ったのは――

キュキュ!
変な侍みたいな動物が待ち構えてたんです!!!!!
そいつはわたしの肩に登ったあと、
ほっぺを何度もべしべしと叩いてきたんです!
なんなんですか!?
ここはこの動物が支配している国なんですか!?

キュ~ッ
キュキュキュ!
キュンキュンキュキュ!

待って待って!
わたしいま来たばっかりで!あなたはなに!?

キュッ
そう鳴くと今度は頭をべしべしと殴られ、
――閃光が走る。
記憶が刺すように流れ込んできて、
けれどそれらはあいまいで、ぼやけて、よく見えない。
ただ唯一はっきりと見えた――
――ごめんねごめん わたしはぬけがら
――ことばだけでも おぼえてほしい
記憶のなかの「わたし」は、そう言っていた。