RECORD

Eno.7 瀬波 りり子の記録

氷と風のアンドロイド

[北摩市 西部 裏世界 アキシマ物流ターミナル レジデンスオブレジデンス西北摩 屋上]



屋上のふちに立って、周囲を眺める。
このあたりには同じような高さの建物もそこまで多くはなく、
水平に目線を置けば、概ね空だけが見える。

飛ぶには、都合のいい場所だ。



拳に宿る氷の力で、羽織るように氷塊を生成する。
次第にそれを変形させ、飛行機の翼のような形に変えていく。
重心のバランスのとれるような場所に、エンジン代わりに風を受けるかたちも付け足して、
操縦が楽になるよう、全体を少し大きめに成形する。

両方の目で翼の先までを眺めて、問題がなければ完成となる。



翼ができれば、ただ飛び降りる。
裏世界でも当たり前に存在する空気を掴み、翼は己の身体を空へ浮かべる。
それは重さを持ち上げきるほどの力を持つわけではないので、
自然と高度が下がっていくが……
そこは、身体に宿る風の力でカバーする。
用意しておいた風受けに、押し出すように風を与えれば……
その翼は、力ずくでこの身体を飛ばし続けてくれる。



押す風を強めれば強めるほど、高速で飛ぶことができる。
しかしその分空気抵抗も強まるわけで……
一定以上の抵抗になるようであれば、氷でまた機首を作り、空気を割くのだが。
そうする必要が出るほどの速度は、この街では流石に必要にならない。

裏世界でしか使えない移動手段だが、これを使えばこの広い街もすぐに移動できる。
ヒトが電気で車輪を回して進む乗り物を使うように、
私は氷を風で押して進む乗り物となるだけだ。
大きく違うとすれば、ヒトはその身を風にさらさないが(バイクでもない限り)、
私は風を押しのけて進むということ。
当機アンドロイドは、風に負けない身体を持つということ。

ただ氷で翼を作る、ただ風で身体を押す。
それだけなら神秘、異能の類で説明がつく。
それを組み合わせるのもあくまで知恵であり……
その速度での移動に堪えるのは、ヒトの条件を超えている。



だから何が嫌なのか、だからどうなりたいのか、だから何が違うのか。
そういう明確な不安や仮定、結論を持てないまま考え続けていたら、
既に数分が経っていたらしい。
その証拠に、ここは市庁舎のところよりも東だ。行き過ぎ。



アンドロイドが考え込んで前を見ていませんでした、などというのは、
きちんと笑い話になるのだろうか。
アンドロイドが到達点の設定されていない演算を続けているというのは、
他の機械から見れば不具合ではないのだろうか。



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ばり子 [Eno.7] 2025-05-30 16:57:56 No.873854

なぜか窓の外から現れて、窓をガラッと開けて入ってきた。
ちゃんと閉めた。

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アンドロイドが窓から部屋に入ってくるのは、
ホラー映画みたいになってしまわないだろうか。