RECORD

Eno.295 ーの記録

パラレルシフト。

「……んー?」

意識が身体に戻ってくる感覚。目が覚める。

「……あー……?」

遠くの並行世界へ時空渡りパラレルシフトしたときはいつもこんな感覚。
寝起き……みたいな?でも今回は家でよかった。でも知らない天井。
どうしよう、ぼんやり考えていると。

「起きたんだね、アイカ」

聞き慣れた声がした。ボクが寝ているお布団の横には姉が居た。

「おはようー。いやー、お姉ちゃんが居て助かった、かな」
「……心配したんだからね」
「それは過去の話でしょー?」
「パラレルシフトする前にトドメを刺されたら終わりなんだから。無茶はしないで」
「ん、はーい」

姉の言うことももっともだ。ボクは不死身じゃない。
ちょっとだけ特殊な能力を持っただけの、ただの人間だ。

「で、この世界について教えて欲しいんだけど」
「……いいよ。何も知らないだろうし」

ボクにお説教しても意味がないのは姉もよくわかってるだろうから。
色々話し始めてくれた。

姉に聞いたことをまとめると、この世界ではボクみたいな能力のことを神秘ということ。
それを周囲にあまり知られすぎると能力を失ってしまうこと。

それから、今のボクは北摩という場所の中学校に通っていること。
その為に学校の近くのアパートで一人暮らししていること。とか。

「ボク一人?家族は?」
「みんな大反対してね。アイカ一人でこっちにくることになった」
「きょうだい仲悪いんだね」
「だいぶね」
「まー、いつものことだよね」
「……それでも私にとって大事なのに変わりはないからね。もちろん、アイカも」
「ありがと」

姉に大事にされてるのはうれしい。

「建前上は私と同居してることになってるから。中学生の一人暮らしは危ないだろうし」
「昨今は珍しくもないんじゃない?」
「世間一般じゃまだ珍しいんじゃないかな」
「そんなの送り出す親も親だなあ」
「お母さんの説得大変だったんだからね?そこはお姉ちゃんに感謝してね、アイカ」
「ありがとー、大好きお姉ちゃん」

半分冗談、半分本心。

「とりあえず数日はお仕事の休みもらってるから私も居るけど、それが終わったら一人暮らしだからね。食事とかちゃんと取るんだよ?お金はお姉ちゃんが全部出すから」
「うん」

金銭面でも生活面でも支援してもらって、お姉ちゃんには本当に頭が上がらない。

「食べ歩き好きなのは知ってるけど……外食ばっかりしちゃダメだからね、自炊もすること」
「ええー……いっぱい食べ歩きしたかったのに」
「ある程度ならいいけど、毎日はダメ」
「はーい」
「キッチンはあるし、冷蔵庫とか調理器具も買っておいてるから。ね?」
「よくそんなお金あるね……家賃とか電気代とかも出してくれるんでしょ?」
「大事な妹の為ならお姉ちゃんはどれだけでも頑張れるんです」
「……そっか、ありがと」

ちょっと恥ずかしい。と同時に尊敬もする。
自炊かぁ……少しは挑戦してみようかな、これを機に。

 これからのことは何もわからないけど。
とりあえず数日だけど、姉が居るなら大丈夫そうだ。
……さて、この世界ではどう楽しもうか?
ボクはそれを考えていた。