RECORD
観測地点、UFO招来その2
某日、某所
――翌日、同時刻。
西の空に向かって太陽が傾いている。
気圧条件を確かめる。異常な数値というほどではない。
雲量は曇りとすべき量。
音を鳴らすと言った通りに、ホイッスルを3つ用意している。
もう一度念を押すように呼び付けることはしなかった。
至極当然のように落ち着いている。
後輩二人が来るのかは怪しい所だ。
来なかった所で一人でもやる。
「お疲れ様です」
UFO招来の儀、再び。
「多分次は音を奏でるやつだな……と思って」
「一応カスタネット持って来たんですけど」
無駄な準備。
「来たか……」
何か意味深な雰囲気で。
「良い心がけだな。
笛持ってきてるけどカスタネットでもいいぞ」
いいのかよ。
「……」
持って来なきゃ良かったな……と思った。
滅茶苦茶やる気ある奴みたいになっちゃったじゃん。
まあ良いか……。
「西の空にやるのは昨日と同じだ。
念じつつ音を鳴らせ」
自分は手持ちのホイッスルを手に取った。
別になんてことはない。ただの笛だ。
音楽を奏でる説も一説にはあるが、大差はないと考えている。
「そういやコバトは来なかったな。
試行する人数が減るだけだからそれも良いか」
若干気にはしているが、
来るかもしれない期待を裏切られたのは悪くない。
期待するときは常に裏切られて欲しい。
「良いか?葛山少年」
「上町さん、今日は来てないんですか」
「…………」
辺りを見回した。
湧水自然公園――そこそこ人が居なくもない公園である。
え、ここで音鳴らすの?
「分かりました……」
溜息を吐く。
こういう時、少年呼びするんだよな。この人。
問答無用・至極当然といった調子でホイッスルを咥えて吹いた。
レ・ミ・ド・ド・ソとは奏でない。
単に区切って五音。
運動会でも鳴らさない妙な鳴らし方。
他人が使った招来の流れは重視するが同じ手は使わない。
オリジナリティ、奇を衒う。
他人の道は参考にするだけ、自分のやり方を貫く。
それが間違っていて的外れだったとしても。
「……」
西の空を見上げた。
雲が青黒く染まっていく。
先輩の真似をして、5回ずつカスタネットを叩いている。
因みに、小学生の頃使っていた物である。実家から持って来た。
まさか高校生になってまた使う事になるとはね。
「来そうですか」
西の空を見つめる。
少し空が暗くなった様な気がするが、果たして。
「ダメそうだな。今回も」
暫く空を眺めていたが、数秒経ってからそう結論付けた。
手帳を開いて日付と時刻と気圧と人数と×を刻んだ。
「次は呪文か」
「呪文は先に覚えておけ、
もしかしたら説明している時間がないかもしれん」
それほど落胆する様子もない。
普通は落胆するものだろうが。
呪文についてブツブツ言いつつ、女は貴方の手に
「アポクアウクトッペ」と書かれたメモを渡した。
「発音やイントネーションは任せる。練習しとけ」
「どうする?前回と同じ報酬でも良いが、
今回は好きな報酬を指定させてやってもいい」
「アポクアウクトッペ……」
紙切れを受け取る。
そんなに長い呪文ではないから、覚えるのに苦労はしないだろう。
「え。好きな報酬を」
本当に何でも良いのか……?
とはいえ、これといって特に希望も無いのだけれど。
いや……でも、向こうにUFO探しに付き合わされてるなら、こっちにも付き合って貰うのが筋なんじゃないか?
「じゃあ、今度心霊写真作るのに協力してください」
急に良く分からない事を言い出す人になった。
「幽霊は実在しないと思うが
心霊写真を作る方法自体は色々あるしわかるかもな」
UFOの実在を真剣に調べている人から出て来ると嫌なセリフだ。
「良いだろう。
やりたいときは呼べ。家のドア叩くとかで。
次回はその呪文の解釈を深めておくように」
頑なにSURFとWaveDを避けている。
「次回明後日。明日は雨予報」
「いや、幽霊が撮りたい訳じゃないです。心霊写真っぽい物が作りたいんですよ。
でも一人じゃ撮れないというか……。
あと、幽霊って女の方がそれっぽいじゃないですか」
「つまり、先輩に幽霊のコスプレして写って欲しい訳で……」
要するに、カスの暇潰しの要求である。断っても良い。
「明後日ですか……」
雨天中止。
上町さん大丈夫かな……と思った。
あと、呪文の解釈って何? とも思った。
「それじゃ、明後日行けたら行きます」
そう言って、公園から去るだろう――。
心霊写真はやりたくなったら家のドア叩きに行きます。










