RECORD
Eno.568 伊達白金の記録
「――つまりね、君の身体にも影響、副作用が表れ始めたということだよ。
伊達白金クン」

―――――――――話は1週間前に遡る。
「やぁやぁ君が申請をくれた学生クン?
まだ若いのにお目が高いじゃないか!
君くらいの年代なら武器といえば銃とか刀剣とか、
そういう鉄板どころが恋しい年頃だろう?」
申請した対怪奇用兵装の受領のため、指定された裏世界のキャンパスの一角に向かうと
マッドサイエンティストが待ち構えていた。
瓶底メガネ。無精髭。くたびれた白衣。猫背。
これでもかというほどのステレオタイプなマッドサイエンティストだ。
「達人は武器を手足のように扱うというがネ。
最初から手足のような武器ならば、達人にもひけをとらないとは思わないかね!!」

「ぶははははワッツ!?!?」

「このコを借りに来ておいてその物言い、なかなかファンクじゃないか少年!」
しまったマッドサイエンティストの好感度を上げてしまった。
「申し遅れた。私は槙島。
この対怪奇兵装【ガルガンチュア】の開発チームのリーダーだ。
見ての通り、表世界ではそれなりの変わり者で通っている。
そしてプロジェクトを支えるのはこんな私についてきてくれる開発チームだ。
……つまりまぁ。そういうことだ。察するがいい」
すごい。社会不適合者でも裏世界なら居場所があるのかもしれない。
ていうか変人である自覚はあるのかよ。
「そんでもってこのチームは多摩科連キャンパスの卒業生で構成された。
君のセンパイたちというわけだ。伊達……えーと、シロカネクン?」

「失敬プラチナムくん。 ……プラチナム!?元素番号78番遷移金属Pt!?」
文句あんのかカッコいいだろプラチナム。
「ぶはははは、よかろうプラチナムクン。
君をこの【ガルガンチュア】のモニターとして開発チームに迎えよう。
コイツは……ゴキゲンだぞ!!」
対神秘兵装【ガルガンチュア】は元来、ロボット工学をベースとする
パワードスーツ開発の延長としてプロジェクトをスタートした。
左腕に装着する大型マニピュレータは左手の動作をトレースし、
意のままに操ることができる。……はずだった。
試作第1式【ガルガンチュア】は本体重量178kg。その堂々たる重量を左腕で支えなくてはならない。
当然、装着できる人物は皆無。
「ウェイトリフティング部に協力を要請したが、にべもなく突っぱねられた。
開発は頓挫しかけたが、我々はここで神秘の存在に目を付けた。
航空力学を無視した浮遊を常時続けている裏世界の住人たち。
奴らもまた質量があるのに浮いている。真似できないか?とね」
「そのメカニズムを解明してしまっては、神秘は神秘ではなくなる。
それはそれで科学の進歩ではあるが、今回の目的はそうではない。
【ガルガンチュア】が非力な一般人でも取り回せるようになればよい。
更に神秘と戦うには、神秘を宿すのはむしろ都合がよい。
なので――不明な浮遊原理は解明せず、不明なまま猿真似した!
浮遊能力を有する怪奇から得られた素材を用いて試作第2式を作りあげたのだ!」
結果として、【ガルガンチュア】試作第2式は更に大型化。
重量215kgと元よりも重くなりながら、稼働時には浮遊効果により重量を相殺する。
「いいかねプラチナムクン。破壊力、つまりエネルギーは質量×速度の2乗で表される。
重力は相殺しても、この200kgを超える質量の塊を助走をつけて叩きつければ、
まあバイクの交通事故並の破壊力がある。
さらにコレ自体が神秘であるとも言えるわけだから、当然神秘同士干渉できる。
画期的ではないかね!!
そして、改良を重ねた現在の【ガルガンチュア】試作第3式には加速用のブースターを増設した。
センサーグローブ内にトリガーを仕込んである。
是非活用してデータを集めてくれたまえ!」
「さて、【ガルガンチュア】制作秘話についてはまだまだ語り足りないが……。
もう一点、君に預ける兵装を紹介しよう。
このAI内蔵プロテクター【アダマント】だ。
肩のアタッチメントで【ガルガンチュア】に接続、連動する。
これらはセットで運用したまえ」
【アダマント】もまた怪奇を素材に開発した軽量装甲を採用。
さらに装着者の筋肉を外部から電気的に刺激する機能を有する。
「健康器具のEMS腹筋パッドが市場に出回っているだろう。
原理はアレと同じだ。君の筋肉に電流を流して収縮させ、
君が意図せずとも受け身や回避を無理矢理させる。
脳の代わりにプロテクターのAIが反射行動をとらせてくれるという寸法だ。
柔道やシステマのプロの動きをトレースしてプログラムを構築した。
装甲の堅牢さと併せて君の五体を満足させることを保証しよう。
現在の難点は頼りすぎると筋肉痛になることだな!
動かされている君の筋肉が悲鳴を上げるからな!ぶはは!」

「裏世界でクーリングオフは通用しないぞプラチナムクン!!」

「さらに【アダマント】はデータロガーとしての機能も有している。
アプリ経由で君のスマート端末からバイタルやその他もろもろのデータを確認できる。
君がレポートで報告すべきは使用感、つまり君の感想だけだ。
他はこの【アダマント】がやってくれる。簡単だろう?」
端末を覗くと、SURF経由で【アダマント】からユーザー認証用のメッセージが届いていた。
認証が済むと『よろしくマスター』とメッセージが届いた。気安いAIもいたものだ。

「抜かりはないぞプラチナムクン!
裏世界では我々開発チームが先回りして怪奇の出現位置に装備一式を配送し、
君のSURFに現場座標を転送しよう!
君は手ブラで……いや、スマート端末だけ持って現地に向かいたまえ!」

こうして、伊達白金は【ガルガンチュア】及び【アダマント】運用試験と称してこの1週間、
アホほど怪奇退治に駆り出されることとなった。
よりにもよって中間考査前の1週間で。
――――――そして現在。冒頭に戻る。
「プラチナムクン。君はこの一週間、我々の期待を上回る成果をあげている。
収集した怪奇の素材を使えば兵装のアップグレードが見込める。
中間考査が終わるころにはロールアウトできるだろう」
「それで、【アダマント】で収集したデータを解析したのだがね。
君のバイタル情報は、一週間でめぐるましく変化した」
「――つまりね、君の身体にも影響、副作用が表れ始めたということだよ。
伊達白金クン」

「君と【ガルガンチュア】【アダマント】は期待以上の活躍をみせ、
君の全身は度重なる戦闘で、想定以上に大量の電気刺激を受け続けた。
今も全身の関節という関節がバキバキに痛むことだろう。僕なら絶対ヤだ」

「ぶはははは。そういうわけで、
君の身体に起きた異変については隠さず報告するのが誠意だろう。
君はこの1週間の戦いで全身に電気刺激を受け続けた結果――。
3cm伸びた。身長ね」

「兵装の貸与開始時点での君の身長は160cmジャスト。
そして本日測定時点では163cm。
今なお君の全身を苛むその痛みは、筋肉痛だけじゃなくて、成長痛もコミコミということだ。
チーム内の仮説としては『電気浴びすぎて第三次性徴来ちゃった』ってところだ。
他の例がないからどこまで伸びるかは未知数だがね。制服は早々に新調が必要になるかもしれない。
そうでなくとも連日の戦闘で傷んでいるだろうし、そちらは協力の礼として研究予算から出そう。
怪奇との戦闘にも耐えうる特注品を都合しようじゃないか。
あ、ちなみに他のバイタルはすこぶる健康体だったぞ。若いっていいな~ぶははははは」

伊達白金は、伸び悩む身長を割と気にしていた。
伊達白金と【ガルガンチュア】
「――つまりね、君の身体にも影響、副作用が表れ始めたということだよ。
伊達白金クン」

「――は?」
―――――――――話は1週間前に遡る。
「やぁやぁ君が申請をくれた学生クン?
まだ若いのにお目が高いじゃないか!
君くらいの年代なら武器といえば銃とか刀剣とか、
そういう鉄板どころが恋しい年頃だろう?」
申請した対怪奇用兵装の受領のため、指定された裏世界のキャンパスの一角に向かうと
マッドサイエンティストが待ち構えていた。
瓶底メガネ。無精髭。くたびれた白衣。猫背。
これでもかというほどのステレオタイプなマッドサイエンティストだ。
「達人は武器を手足のように扱うというがネ。
最初から手足のような武器ならば、達人にもひけをとらないとは思わないかね!!」

「いやその理屈はおかしい」
「ぶははははワッツ!?!?」

「あっすんませんついツッコミが」
「このコを借りに来ておいてその物言い、なかなかファンクじゃないか少年!」
しまったマッドサイエンティストの好感度を上げてしまった。
「申し遅れた。私は槙島。
この対怪奇兵装【ガルガンチュア】の開発チームのリーダーだ。
見ての通り、表世界ではそれなりの変わり者で通っている。
そしてプロジェクトを支えるのはこんな私についてきてくれる開発チームだ。
……つまりまぁ。そういうことだ。察するがいい」
すごい。社会不適合者でも裏世界なら居場所があるのかもしれない。
ていうか変人である自覚はあるのかよ。
「そんでもってこのチームは多摩科連キャンパスの卒業生で構成された。
君のセンパイたちというわけだ。伊達……えーと、シロカネクン?」

「伊達白金ッス」
「失敬プラチナムくん。 ……プラチナム!?元素番号78番遷移金属Pt!?」
文句あんのかカッコいいだろプラチナム。
「ぶはははは、よかろうプラチナムクン。
君をこの【ガルガンチュア】のモニターとして開発チームに迎えよう。
コイツは……ゴキゲンだぞ!!」
対神秘兵装【ガルガンチュア】は元来、ロボット工学をベースとする
パワードスーツ開発の延長としてプロジェクトをスタートした。
左腕に装着する大型マニピュレータは左手の動作をトレースし、
意のままに操ることができる。……はずだった。
試作第1式【ガルガンチュア】は本体重量178kg。その堂々たる重量を左腕で支えなくてはならない。
当然、装着できる人物は皆無。
「ウェイトリフティング部に協力を要請したが、にべもなく突っぱねられた。
開発は頓挫しかけたが、我々はここで神秘の存在に目を付けた。
航空力学を無視した浮遊を常時続けている裏世界の住人たち。
奴らもまた質量があるのに浮いている。真似できないか?とね」
「そのメカニズムを解明してしまっては、神秘は神秘ではなくなる。
それはそれで科学の進歩ではあるが、今回の目的はそうではない。
【ガルガンチュア】が非力な一般人でも取り回せるようになればよい。
更に神秘と戦うには、神秘を宿すのはむしろ都合がよい。
なので――不明な浮遊原理は解明せず、不明なまま猿真似した!
浮遊能力を有する怪奇から得られた素材を用いて試作第2式を作りあげたのだ!」
結果として、【ガルガンチュア】試作第2式は更に大型化。
重量215kgと元よりも重くなりながら、稼働時には浮遊効果により重量を相殺する。
「いいかねプラチナムクン。破壊力、つまりエネルギーは質量×速度の2乗で表される。
重力は相殺しても、この200kgを超える質量の塊を助走をつけて叩きつければ、
まあバイクの交通事故並の破壊力がある。
さらにコレ自体が神秘であるとも言えるわけだから、当然神秘同士干渉できる。
画期的ではないかね!!
そして、改良を重ねた現在の【ガルガンチュア】試作第3式には加速用のブースターを増設した。
センサーグローブ内にトリガーを仕込んである。
是非活用してデータを集めてくれたまえ!」
「さて、【ガルガンチュア】制作秘話についてはまだまだ語り足りないが……。
もう一点、君に預ける兵装を紹介しよう。
このAI内蔵プロテクター【アダマント】だ。
肩のアタッチメントで【ガルガンチュア】に接続、連動する。
これらはセットで運用したまえ」
【アダマント】もまた怪奇を素材に開発した軽量装甲を採用。
さらに装着者の筋肉を外部から電気的に刺激する機能を有する。
「健康器具のEMS腹筋パッドが市場に出回っているだろう。
原理はアレと同じだ。君の筋肉に電流を流して収縮させ、
君が意図せずとも受け身や回避を無理矢理させる。
脳の代わりにプロテクターのAIが反射行動をとらせてくれるという寸法だ。
柔道やシステマのプロの動きをトレースしてプログラムを構築した。
装甲の堅牢さと併せて君の五体を満足させることを保証しよう。
現在の難点は頼りすぎると筋肉痛になることだな!
動かされている君の筋肉が悲鳴を上げるからな!ぶはは!」

「……使うのやめようかな」
「裏世界でクーリングオフは通用しないぞプラチナムクン!!」

「えぇ……」
「さらに【アダマント】はデータロガーとしての機能も有している。
アプリ経由で君のスマート端末からバイタルやその他もろもろのデータを確認できる。
君がレポートで報告すべきは使用感、つまり君の感想だけだ。
他はこの【アダマント】がやってくれる。簡単だろう?」
端末を覗くと、SURF経由で【アダマント】からユーザー認証用のメッセージが届いていた。
認証が済むと『よろしくマスター』とメッセージが届いた。気安いAIもいたものだ。

「ところでコレ、どうやって持ち運べば?
起動してないときは普通に重いんスよね。
それに表世界でこんなの身につけてたらは職質モノでしょ」
「抜かりはないぞプラチナムクン!
裏世界では我々開発チームが先回りして怪奇の出現位置に装備一式を配送し、
君のSURFに現場座標を転送しよう!
君は手ブラで……いや、スマート端末だけ持って現地に向かいたまえ!」

「対応がめちゃくちゃ脳筋。
でも自室に置いとけとか言われなくてよかった……!」
こうして、伊達白金は【ガルガンチュア】及び【アダマント】運用試験と称してこの1週間、
アホほど怪奇退治に駆り出されることとなった。
よりにもよって中間考査前の1週間で。
――――――そして現在。冒頭に戻る。
「プラチナムクン。君はこの一週間、我々の期待を上回る成果をあげている。
収集した怪奇の素材を使えば兵装のアップグレードが見込める。
中間考査が終わるころにはロールアウトできるだろう」
「それで、【アダマント】で収集したデータを解析したのだがね。
君のバイタル情報は、一週間でめぐるましく変化した」
「――つまりね、君の身体にも影響、副作用が表れ始めたということだよ。
伊達白金クン」

「――は?」
「君と【ガルガンチュア】【アダマント】は期待以上の活躍をみせ、
君の全身は度重なる戦闘で、想定以上に大量の電気刺激を受け続けた。
今も全身の関節という関節がバキバキに痛むことだろう。僕なら絶対ヤだ」

「ごめん殴っていいスか?」
「ぶはははは。そういうわけで、
君の身体に起きた異変については隠さず報告するのが誠意だろう。
君はこの1週間の戦いで全身に電気刺激を受け続けた結果――。
3cm伸びた。身長ね」

「 身 長 」
「兵装の貸与開始時点での君の身長は160cmジャスト。
そして本日測定時点では163cm。
今なお君の全身を苛むその痛みは、筋肉痛だけじゃなくて、成長痛もコミコミということだ。
チーム内の仮説としては『電気浴びすぎて第三次性徴来ちゃった』ってところだ。
他の例がないからどこまで伸びるかは未知数だがね。制服は早々に新調が必要になるかもしれない。
そうでなくとも連日の戦闘で傷んでいるだろうし、そちらは協力の礼として研究予算から出そう。
怪奇との戦闘にも耐えうる特注品を都合しようじゃないか。
あ、ちなみに他のバイタルはすこぶる健康体だったぞ。若いっていいな~ぶははははは」

「くそっやっぱ殴りたいけど嬉しさがちょっと勝ってるありがとう!!」
伊達白金は、伸び悩む身長を割と気にしていた。