RECORD

Eno.575 氷見しあんの記録

連絡 - 1

「はい、もしもし」

「――爺さま!?」



ご近所さんに一言連絡するだけでも電話を嫌がって
車を出してまで直接伝えに行くあの爺さまが、電話をかけてくるなんて。
夢でも見ているのかと本気で思ってしまった。

「……あ、あぁ、そうだよな。
 うん、うん……元気だよ。爺さまは?
 ……そうか、よかった」


「大丈夫だって。
 うん、今のところ同じマンションに住んでるのはいい人ばっかりで」

「はははっ。
 そんな作り話みたいなご近所さんいないよ」



こうして話がしたいとなると、爺さまには電話しか手段がない。
ちゃんと生活できているかそのうち抜き打ち検査に来るとか言っていたが、
本気そうに見えてそうでもなかったのかもしれないな。

「それで用件って何……仕送り?
 なんでも嬉しいけど……肉?冷凍の?
 うん、うん……あ~、もうそんな時期か」

「山菜採りのお返し、大体肉か菓子折りだもんなぁ。
 今年も同じくらい?……へぇ」


「うん……ん、うん……は?
 いやいやいや、一人暮らしには多すぎるって」



「もう送った!?」

「明日あたり届く!?」


「もぉ~~爺さま~~!
 いきなり物やるのやめれっていっつも婆さまに言われてるべ?」

「まず連絡を――っ」



相手方の都合を聞かずどっさり持っていって婆さまに怒られるまでがセットの爺さま。
まさか自分がその標的になる日が来るとは思わず、ありがたいことだと思うのについ怒ってしまって。
興奮したせいで咳き込んでしまったがすぐに落ち着いた。
少し喉が痛むが話せないほどではない。

「……大丈夫、軽く咽ただけだから。
 無理なんてしてないって。
 うん……うん、大丈夫」



「いや、冷凍庫には入るよ
 入るけど、そんなに自炊してないからだめにして投げることになりそうで
 真空パックにしてあるって言っても、ずっと保存できるわけでもないし」

「ん~……いや、大丈夫。
 自炊してそうなご近所さんに食べないか聞いてみる」


「ううん、嬉しいよ。
 気にかけてくれてありがとう、爺さま」



「うん……うん……わかってる。
 爺さまも病気しないように、気をつけて」