RECORD

Eno.251 鳴宮優希の記録

【9.わたしの“好き”は】

 
 そう言えばそろそろ夏祭りなんだって。
 奏翔に、一緒に行こうって誘われて。
 その為には浴衣が必要だって話で。
 

「……服を選ぶ、か」


 怖かった。足が竦んでしまいそう。
 僕がかわいい服が好きと主張したらさ、お母さまは。

 だけど奏翔は怖くて固まってしまった僕の手を握って、
 励まして、くれて。その温もりに落ち着いて。

 選んだのは、青地に菊花。
 綺麗な浴衣だって思った。
 これが“好き”って思った。
 これを着て夏祭りに行けたら、どれだけ素敵だろう?

「……僕は、これが、好き!」


 やっと、言えたね。
 約束、果たせたね。

 かわいい服が好きって、その後、ちゃんと言えた。
 まだ怖いよ。だけどもう、大丈夫だよ!
 奏翔が乗り越えさせてくれた。
 奏翔が、最後の鎖の鍵を解いてくれた!

 かわいい服も似合うよって言ってくれたから。
 これから少しずつ、そんな服も着てみようと思うよ。
 誰にも強制されないし否定もされない。
 これは紛れもなく、僕の“好き”だ!

 それを全力で肯定し、
 隣に寄り添ってくれた奏翔が、すき。

 単なる“友達”で居るには、
 僕らはもう、“特別”になり過ぎた。

(──夏祭り)


 君にちゃんと、伝えられるかな。
 ねぇ、君なら僕の“好き”、拒絶しないで受け止めてくれるよね。

 その後で雑貨屋で買った、音符のヘアピンふたつ。
 灰色と、紫色と。意味はまだ、言わない。

──君の隣は、何処よりも落ち着ける場所。

──君は、誰よりも大切な人。


 自覚、しちゃったな。

 夏祭り。僕は僕の見つけた新しい“好き”を、
 いちばんの“好き”を、君に伝えにいくからね。
 僕の選んだ浴衣を着て、音符のヘアピン身に付けて!

(──だいすき)