RECORD

Eno.232 月影誠の記録

邂逅③

子供の興味ってのはすぐに移り変わるもんだ。
だから偶然アザーサイドに迷い込んで大きな犬に出会ったとしても、すぐに忘れて次の面白いことに熱中する。
実際俺も、結局次の日の放課後にはまた性懲りもなくザリガニ釣りに出かけてでっかい獲物をしとめてこよう、って思ったんだ。

けど。


「…………」


「……!?」



なんかすぐにまたアザーサイドに迷い込んだ。どうして。


「あ! 昨日のごっついわんこ!」



「なあ! お前のこと話したんやけどなんやっけ、お前、えーっと」


しらばっくれたハウス……?
 って、オカンとか言うんやけど……」


「!? ッ!!」



なんか全力抗議されてることだけは分かる。

(子供の口に前足を乗せる)


(首を横にぶんぶん振る)


(自分のマズルに前足を乗せる)



「…………」



「話すな危険?」


「!!」(YES)



悪ガキのアザーサイド知識が1つ増えた!
悪ガキのアザーサイドレベルが1上がった!


「オッケー! ほなお前のことは黙っといたるわ!
 お前のことは俺とお前の秘密、な!」


「グル…………」



「え、何でそんな顔されんの?
 なぁなぁもっとわんこのこと教えてぇな~
 お前の好きなもんなに? 俺はザリガニ」



「お前ザリガニ食うたりするん?
 すまんな、今日ザリガニまだ釣ってへんのや。
 今度釣ってきたらお前にやるな」


「ガルル……」
(首を横に振っている)



今日は結局、このくらいの会話で追い返された。
まだ当時はあいつの言ってる言葉が分からなかったし、アザーサイドについても全然知らなかった。
ただ、俺は頻繁に迷い込めるほどの素質はあったらしい。
この後も何度も何度もここに足を運んだ。



そして足を運ぶたびに。


「お! わんこ~! 今日も会いに来てくれたん!?」


「ウワゥッ!!」
(訳:違う! 小僧から来たのだ!)



「テレんなって~! ええやんええやん、お前と俺の仲やん!
 な、な、今日はザリガニ持って来たんやで、食わへんか?」


「ワァッ!!」
(訳:だから泥臭くて要らないと言っているだろうが!)




アザーサイドの一角は間違いなく、めちゃくちゃやかましかったと思う――