RECORD

Eno.177 都成 后乃の記録

罪悪感と、一歩

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裏世界で、表世界で知っている誰かと会うたびに、
少しだけほっとしてしまう自分が、嫌になる。

神秘に関する事案は増え続けている。
そう説明があった時も、私は同じ気持ちになった。
私じゃない。私が、アスタちゃんを招いた・・・わけじゃない…って。

あの日、夕焼けだったはずの世界が、朝焼けに染まる世界へと切り替わった瞬間。
あの時の私は、きっと酷い顔をしていたと思う。
取り繕う余裕なんてなかった。
ただ、何が迫ってもアスタちゃんを逃がそうって、それしかなくて。

出来ることなら、もう一度あの世界に渡るなんてしたくなかった。
無理強いはしないという大人の言葉に素直に従って、
日常の世界に戻ってしまえば良い。って。

それなのに、アスタちゃんは選んでしまった。
高笑いや話し方なんかはいつも通りだったけど、
好奇心や期待だけじゃない。何か、固く決意をしたようなあの目を見てしまったら。
絶対に駄目だなんて、言えなくなってしまった。

アスタちゃんの事は止めたい。
でも、アスタちゃんからアスタちゃんの意志を奪いたくない。
それは、大げさではなく命を奪うことに等しいと、そう思うから。

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カレントコーポレーションの作業場を借りて、私は二つの工具を見下ろす。
釘打機。エアタッカー。
私の武器…になる予定の物。
武術なんてした事がないし、暴力込みの喧嘩だってした事がない。
インターンシップ生として武器の支給も提案されたけれど、
物々しいものもなんだか、上手く馴染めなくて。
「これも十分、ものものしすぎるけど」
重火器よりは、なんて、我ながら言い訳のように苦い声。

制限に当てはめる必要のない条件下での改造に、心躍らないわけではない。
私はちっちゃい頃から好奇心旺盛で、
その傾向は良くも悪くも発明や改造にも色濃く出てしまう。
だから私はいつも通り、自分に一番効く魔法の言葉を使う。

"あの子が一緒にいる場所で、使って良い物を。"